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第6話

翌朝。

カインが畑へ向かおうと扉を開いた瞬間、木の上から影が落ちてきた。


「リィナぁぁあ!!久しぶりだーー!!」


ドサッ。


灰銀色の長い髪が揺れ、鋭い金色の瞳が光る。

リィナによく似ているが、それを一回り力強くしたような獣人の女性だった。


「な、なんだ……?」


カインが身構えると、家の中からリィナが飛び出してきた。


「お姉ちゃん!?今日来るなんて聞いてないよ!」


「ふふん、たまには予告なしで来るのが姉というものだ」


サリナと名乗ったその女性は、リィナを抱きしめた後、すぐにカインへ視線を向けた。


「で。おまえが――」


金の瞳がギラリと光った。


「リィナを連れ込んで同棲している男か!!」


「連れ込んでない!!」


リィナは真っ赤になって手を振った。


「違うの!村長の提案で、私が護衛兼案内係として一緒に住んでるだけで!」


「ふむ……?」

サリナは腕を組み、鼻を鳴らした。


「同じ家で寝起きしているなら、もう夫婦ではないか」


「ならねぇよ!!」


だがサリナは聞いていない。


「よし、カインだったな。リィナと結婚したいなら――」


「だからしてないって言ってるだろ!」


「私に勝ってからにしろ!!」


勝手に話が進む。

リィナは両手をバタバタさせて叫んだ。


「お姉ちゃん!カインは本当に違うの!!」


「リィナ。男の言い訳など聞くな。姉を越えられぬ男など、妹の夫として認められん!」


(聞く気ゼロか……こりゃやばい)


サリナは腰に手を当て、堂々と宣言した。


「勝負は“狩り”だ!獣人族の強さは狩りの腕で決まる!」


「狩り……ねぇ」


言いながら、カインは少し考えた。


サリナは見た目通りの猪突猛進タイプだ。

戦いでも狩りでも、勢いで押し切ろうとするだろう。


一方カインは騎士団で地形の利用や罠の仕掛けを徹底的に学んできた。


(なら勝てるかもしれないな)


カインは肩をすくめた。


「分かった。勝負、受けてやるよ」


「よく言った!妹を守るつもりがあるなら、姉の私を越えてみせろ!」


リィナは顔を真っ赤にしてうつむく。


「……だから違うのに……もう。」


場所は村近くの森。

制限時間は「日が暮れるまで」。

より多くの獲物を持ち帰った方が勝ちだ。


サリナは開始の合図と同時に叫んだ。


「行くぞォーーーー!!」


そして草むらへ突撃。

小動物を見つけるたび跳びかかり、失敗してはまた追いかける。


「うおおお!逃がすかッ!待てぇぇ!!」


(……すげえな。その体力)


カインは呆れながらも、逆方向へ歩き出した。


彼が狙うのは大物ではない。

この勝負の鍵は「数」。

ならば小型の鳥や兎が多い場所を探るべきだ。


森の地形を観察する。

湿った土、獣道、木の実が落ちている場所――

そのすべてが小動物の習性を教えてくれる。


(……ここだな)


カインは細い枝を折り曲げ、簡易の“くくり罠”を仕掛けた。

さらに離れた場所にもう一つ、そのまた隣にもう一つ。


手際よく、静かに。


そして――


「……よし、一匹」


数分で最初の罠がかかる。

そのあとも、一定の距離をとりながら複数の罠を仕掛けては回収していく。


その間、森の奥からはサリナの雄叫びが聞こえていた。


「うおぉぉぉおらぁぁ!!逃げんなぁ!!」


カインは苦笑した。


(あれじゃ獲物も逃げるよ……)


日が暮れかけた頃、一同は村の広場に集められた。


村長が腕を組んで宣言する。


「さあ、二人とも獲物を見せよ!」


サリナは胸を張った。


「どどんと見せてやる!昼まで追いかけてやっと一匹捕まえ……」


カインが並べた獲物の量を見た瞬間――


「………………は?」


地面に広がるのは、兎や鳥、小型獣あわせて十数匹。


サリナが凍りついた。


「な、なんで……なんでこんなに……!?あんた、そんなに脚速くないだろ!!」


「脚で追う必要はないさ」


カインは肩をすくめた。


「罠を仕掛けて回ってただけだ」


リィナが感心して目を輝かせる。


「罠……すごい。あの短時間でこんなに……!」


サリナは口をパクパクさせた後、突然地面に膝をついた。


「……私の……負けだ……」


悔しいのか、涙目で叫ぶ。


「でも覚えてろ、カイン!姉として、妹を任せる条件は――」


「だから結婚じゃないって何回言えば」


「次は……戦闘勝負だ!!」


リィナは頭を抱えた。


「お姉ちゃん、もうやめてぇぇ!!」


一方、カインは苦笑しながら空を見上げた。


(……この家族、なんか面倒くせぇ……けど悪くないな)


リィナが小さく言う。


「ありがとう、カイン……お姉ちゃんに勝ってくれて」


カインは少し照れくさそうに顔をそむけた。

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