「虚影の艦隊(アルマダ)」
光速航行技術の実現によって人類は銀河へと膨張し、無数の国家と勢力が割拠する時代。
東宙域において、大国バルドリア帝国と弱小国通商連盟マーティスを隔てる宙境には、ゼルガード鉱山惑星があった。
大気温度50度を超える不毛の惑星は長らく緩衝地帯とされてきたが、七年前に発見されたレアメタルの鉱脈が状況を一変させる。
ゼルガードの資源はマーティスの国家予算を支える稼ぎ頭。だが、帝国は「古来より我が領土」と主張し始め、軍事演習を繰り返すようになった。
総力戦になれば小国マーティスが滅びるのは必至。そこで政府が選んだ策は――“八百長の戦争”だった。
帝国に見せ場を作り、対価として資源惑星を譲り渡す。そうして国際的な体裁を保ちつつ、生き残るための「茶番」である。
だが、その茶番は思わぬ形で破綻する。
徴用された一隻の旧型艦、そしてスケープゴートとして派遣された若き士官カイン。
彼が無自覚に放った一手が、帝国艦隊を退ける“虚像の勝利”を生み出してしまう。
虚構はやがて真実となり、英雄なき国に“英雄”が誕生する。
その名は歴史を動かす旗印となり、東宙域のみならず銀河全土を揺るがす戦史の幕を開けるのだった――。
東宙域において、大国バルドリア帝国と弱小国通商連盟マーティスを隔てる宙境には、ゼルガード鉱山惑星があった。
大気温度50度を超える不毛の惑星は長らく緩衝地帯とされてきたが、七年前に発見されたレアメタルの鉱脈が状況を一変させる。
ゼルガードの資源はマーティスの国家予算を支える稼ぎ頭。だが、帝国は「古来より我が領土」と主張し始め、軍事演習を繰り返すようになった。
総力戦になれば小国マーティスが滅びるのは必至。そこで政府が選んだ策は――“八百長の戦争”だった。
帝国に見せ場を作り、対価として資源惑星を譲り渡す。そうして国際的な体裁を保ちつつ、生き残るための「茶番」である。
だが、その茶番は思わぬ形で破綻する。
徴用された一隻の旧型艦、そしてスケープゴートとして派遣された若き士官カイン。
彼が無自覚に放った一手が、帝国艦隊を退ける“虚像の勝利”を生み出してしまう。
虚構はやがて真実となり、英雄なき国に“英雄”が誕生する。
その名は歴史を動かす旗印となり、東宙域のみならず銀河全土を揺るがす戦史の幕を開けるのだった――。
第一話 虚像の英雄
2025/08/20 01:27
(改)