裸の王女
雪が吹き荒れる帝都の中心街に、広大な邸宅があった。殴りつけるように降る雪をも砕く鉄壁の外壁。槍のごとく高くそびえ、規則正しく並ぶ鉄柵は、まるで鉄格子のようだった。来る者を拒み、去る者をも捉える――そう表現しても過言ではない、監獄のような邸宅である。
初代当主は既にこの世を去っていた。庶民の出ながらも、交易で歴史的な成功を収め、この地所を購入し、準男爵の地位を授けられた男。その才覚に惹かれ、彼と婚姻したのは、美しい貴族の令嬢だった。そして、その一人娘こそが、現在の当主である。
抜けるように白い肌、蜂蜜色の金髪。眉間から一直線に通るが、それでいて主張の弱い鼻。透き通った海のような輝きを宿す、つぶらな瞳。立ち行く者すら振り返らせる母譲りの美貌に、父譲りの卓越した知性すら兼ね備えた――およそ非の打ち所のない女性であった。
ただ、人間性という一点を除いては。
「見よ、今日を生きる帝都の庶民どもを。わらわが一日で得られる地代を、こやつらは数か月もかけて稼ぐのじゃろう。その努力は敬服に値するが、しかして、やはり――滑稽じゃのう。」
彼女は上階からの眺めが好きだった。もちろん、雪景色や街並みの美しさに感動しているわけではない。からくり人形のように正確に動く人々の「規律性」に感動し、そして嘲笑していた。
「この眺め、やはりたまらんのう。たまらんのう。の、渚。」隣にいた女中に共感を求める。
「七海、あんた私が辺境の商家の出だと知ってて言ってる?」「もちろんじゃ。その哀れな商家の娘を、情け深いわらわが女中として雇っておるのじゃ。感謝しとるかの?」「まったく、私があんたに雇われてなかったら、あんたの話し相手は常に壁よ、壁。」
渚と呼ばれた女中はため息をついた。「当主に共感する」のも女中の仕事の一つだが、彼女は堂々とその務めに抗っている。
「ところで庶民どもは、わらわが生まれながらに金銭的な特権を享受しておることに『ずるい』と感じるようじゃ。しかし、そんな物質的な利益など、所詮オマケに過ぎぬ。精神的な官能――この財産をもって庶民どもを見下し、得られる優越感。むしろこの愉悦のほうがはるかに大きい。もし彼らがそれを知ってしまったら……革命の一つや二つ、起こるかも知れんの。」
「そんな陰気な性格してるから、あんたはずっと友達いないのよ。」
七海の笑い声が、帝都にこだました。