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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第四章 ヴァルディア

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95/207

95. 決着

 闇の魔法使いの放った隕石が、炎の咆哮とともに空から急降下する。その巨大さはコロシアムだけでなく、街全体をも飲み込む勢いだ。


「これが……フレア・ソルヴィールの力……!」


 セドリックは立ち尽くし、信じがたい光景を見上げた。


 その時、静かにポケットに手を伸ばしたルナが、学長から託された杖を取り出した。


「これで終わりよ」


 彼女の目に一切の迷いはなかった。杖を掲げ、ルナは高らかに呪文を唱える。


「ドラコ・テンペスタス!」


 その瞬間、杖の先から放たれた水の魔法陣が広がり、そこから水の龍が吠えるように飛び出す。その身体は闇の隕石を遥かに超える大きさで、まるで生きているかのように渦を巻きながら空へと突進した。


「押し返せ!」


 ルナの声に呼応するかのように、水の龍が隕石に激突し、凄まじい音が空間を裂く。炎と水がせめぎ合い、轟音と爆発の光が空を満たす。


「その力……その杖……! 君、一体何者だい?」


 闇の魔法使いの目が細まり、薄い笑みが広がる。


 ルナは冷静さを崩さず、杖を握り締め続ける。だが、突然コロシアムの上空に無数の影が現れた。闇の魔法使いたちが姿を見せ、ルナを取り囲むように配置につく。


「まさか……!」


 セドリックが歯噛みする。


 闇の魔法使いたちの手に宿る黒い炎が次々と放たれる。ルナは隕石を食い止めているため、手が離せない。もはや防御は不可能だ。


 だが、その刹那――


「防御は俺に任せろ!」


 空から二本の巨大な剣が光の如く舞い降り、闇の魔法を弾き返した。


 観衆がどよめく中、コロシアムの伝説の英雄ヴァリス・アルゼイドが堂々と姿を現す。


「国王様! おやめください!」


 鋭い声が場を切り裂いた。


 闇の魔法使いの瞳がぎらつき、口角を上げる。


「おやめ? フフフ……これは私の意志だよ」


 ヴァリスは剣を構えたまま、悲痛な表情で叫ぶ。


「王の身体を操っているのか……!」


 ルナの龍が隕石を押し返している間も、闇の魔法使いたちは次々と攻撃を繰り出す。ヴァリスとセドリックが前に立ちふさがり、全身全霊で防御を試みるが、次第に追い詰められていく。


「フレア・ソルヴィールの力はまだまだこんなものじゃないよ」


 闇の魔法使いが不気味な笑みとともに呟くと、新たな破壊の魔法陣が空中に現れる。


 ――その時。


 観客席から駆け上がった一人が、コロシアムの中央で静かに杖を構えた。


「エマ……!」


 ルナが小さく息を飲む。


 エマは顔を上げ、全身から湧き出る魔力を集中させると、低くしかし力強く呪文を唱えた。


「コル・クエスキス!」


 上空に広がる魔法陣が、一瞬の閃光とともに全てを覆い尽くす。


 ――そして、時間が止まった。


 観客も、闇の魔法使いたちも、すべての動きが静止する。動けるのはルナ、ヴァリス、そして国王だけ。


「これは……時間停止魔法? 違う……! これは、心を止める魔法だ……!」


 ヴァリスが驚愕の表情で呟く。上空の龍と隕石だけがなおも動き続けていた。


 国王の口元がゆがむ。


「なんと素晴らしい魔法だ。だが私には効かない――」


 その瞬間、国王の身体が激しく痙攣する。黒い闇が体内から押し出され、叫び声とともに国王の影から闇の魔法使いが滲み出てきた。


「な、なぜだ……!?」


 国王の声が震える。


 エマは魔法を解かず、最後の力を振り絞り続けた。


 国王が地面に崩れ落ち、闇の魔法使いが完全に身体から追い出された瞬間、隕石は砕け散り、光の粒子となって消え去った。


 コロシアムには静寂が訪れた。


 ルナはゆっくりと歩み寄り、地面に落ちているフレア・ソルヴィールを拾い上げた。


 その瞬間、エマの膝ががくりと崩れ、その場に倒れ込む。エマの魔法によって心を止められていた闇の魔法使いたちは、国王が倒れているのに気づき、その場から逃げるように消えていった。


「エマ!」


 ルナは急いでエマのもとへ駆け寄った。


 セドリックとヴァリスも、気絶した国王を見守りながら、深い安堵の息をついた。

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