92. 激突
セドリックとルナの間に、静かながらも重々しい緊張が広がっていた。闘技場を囲む観客たちは言葉を失い、息を殺して見守っている。
「これが最後だな」
セドリックが剣を掲げると、その刃が雷光に包まれた。
「どれほどの力か、見せてもらおう――ルナ」
ルナは一言も返さず、ただ指先をゆっくりと掲げた。その動きだけで空気が揺らぎ、周囲の魔力が渦を巻く。
「ならば行く!」
セドリックが地を蹴り、一瞬でルナとの距離を詰めた。
「エレクトロ・ブレード!」
剣に宿る雷の力がほとばしり、稲妻のごとくルナに突き刺さる。
しかし――。
「……」
ルナは微動だにせず、右手を軽くかざすだけだった。透明な魔法障壁が稲妻の軌跡を受け止め、その衝撃が弾け飛ぶ。
「やはり、ただの防御ではないな……!」
セドリックはすぐに間合いを取り直し、続けざまに魔法の剣撃を繰り出す。
「フロスト・テンペスト!」
氷の嵐が剣から噴き出し、場内を凍てつかせる冷気が襲いかかる。
「消えろ」
ルナが低く囁くと、空気中の魔力が収束し――。
「フラマ・エヴァノ!」
凄まじい熱の爆発が冷気を一瞬で蒸発させた。氷と炎の激突が生む衝撃波が観客席にまで達し、人々の悲鳴が響く。
「……これは!」
ジャックが興奮した声を上げる。
「ルナ選手、完全にセドリック選手の攻撃を圧倒しています! いったい彼女の本当の力はどこまで――!?」
セドリックは息を整えながら、再び剣を握り直した。
「これが……限界ではないだろう?」
すると、ルナが口を開いた。
「これでどうかしら?」
その言葉に応じるように、彼女の背後に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
セドリックの瞳がわずかに揺れた。
「来い、ルナ」
彼らの激突は、これまでの戦いを超える――。




