89. 猛者
ついに熱気渦巻くヴァルディア・コロシアムで、決勝戦の幕が上がった。開始の合図が響き渡ると、場内は一斉に動き出した。20名の猛者たちが円形の闘技場に立ち並び、広大なフィールドのあちこちで火花を散らす。
中央に立つルナ――女性の姿を取ったルイ――は、鋭い瞳で戦況を見極めながら冷静に息を整えていた。
「うおおおおっ!」
ある選手が叫び声とともに炎の槍を放つ。標的は近くにいたセドリックだった。
「……無駄だ」
セドリックは身じろぎもせずに剣を振るう。剣から放たれた青白い雷光が槍を粉々に砕き、炎を操った男を容赦なく吹き飛ばした。
一方、リチャードとカルロス――魔法連盟の精鋭コンビ――はすでに背中合わせの陣形を取っていた。
「行くぞ、カルロス!」
「はい! アース・ストライク!」
カルロスが地面を踏みつけると、巨大な石の槍が地面から突き上がり、近づく選手三人を吹き飛ばす。
リチャードは空を切るように杖を振り下ろした。
「フレイム・カスケード!」
業火の波が広がり、数名の選手がその猛火に飲み込まれて悲鳴を上げた。
一方、ルナはまだ一歩も動かない。彼女の周囲には無数の魔力弾が飛び交うが、軽く手を動かすだけで、それらすべてを弾き返していた。彼女の周囲には透明な魔法障壁が幾重にも張られ、敵の攻撃は一切届かない。
「何だこの防御……」
一人の魔法使いが驚愕した表情を浮かべた瞬間、背後からシルヴァの剣が一閃し、彼を空中へと突き飛ばした。
他の選手たちが次々と戦場から消え、ようやく真の戦いが始まる。
誰よりも先に動いたのはダリウスだった。彼の手には黒いオーラを纏った短剣が握られている。
「シャドウ・スパイク!」
彼の声とともに、漆黒の槍が地面から無数に噴き出し、周囲の選手たちを襲った。
「この程度……!」
リアナが素早く反応する。
「ルクス・バニッシュ!」
彼女の杖先から放たれた純白の光が、すべての影の槍を掻き消した。その見事な魔法に観客がどよめく。
一陣の風とともにシルヴァがリアナへと突進した。リアナは素早く防御の呪文を唱えるが、シルヴァの剣が放つ雷撃が彼女のバリアを粉砕する。
「しまった――」
「雷鳴剣!」
シルヴァの一撃が直撃し、リアナはその場に膝をつき倒れた。光が彼女の体を包み、脱落が告げられる。
一方、リチャードとカルロスはアランを倒し、彼を吹き飛ばす。しかし、勝利の安堵も束の間、セドリックの猛攻がカルロスを襲う。
「はぁっ!」
セドリックの剣が閃き、雷と氷の魔力が炸裂する。
「ぐあっ――!」
カルロスが吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。その姿に脱落を告げる光が灯った。
セドリック、ルナ、ダリウス、リチャード、シルヴァ。 最後に残った五人が、互いに睨み合いながら、それぞれの魔力を高めていく。
次の一手が、試合の流れを大きく変える――。




