87. 温かい時間
数日後、ルナ(ルイ)は、今日も闘技大会の試合を観に行っていた。エマは宿で静かに夕食を作りながら、ルナが帰ってくるのを待っていた。
いつもとは違う穏やかな時間を過ごしながら、エマの心にはひとつの思いがあった。
夕食を整えた頃、宿のドアが開き、ルナが帰ってきた。エマはにっこりと微笑んで杖を振り、『Happy Birthday』と文字を宙に浮かび上がらせた。
「こんな時だけど、17歳の誕生日おめでとう、ルイ!」
その言葉とともに、魔法の文字が夜空のように輝きながら、ルナの周りを囲んだ。
ルナは驚いたように目を見開き、しかしすぐに微笑んだ。無言で部屋に入り、宿のカーテンをすべて閉めると、呪文を唱えた。次の瞬間、ルナは再び、元の男の姿に戻った。
「ありがとう、エマ」
ルイの声には、心からの感謝が込められていた。
二人は一緒に夕食とケーキを堪能し、楽しいひとときを過ごした。食事が終わると、エマはルイに小さな包みを渡した。ルイは驚いた様子で包みを開けると、そこには冬物のセーターが入っていた。
「魔法のセーターだよ。盾の役割も果たしてくれるから、もしもの時には役立つかも」とエマは説明した。
エマは少し恥ずかしそうに続けた。
「初めて作ったから、あんまり上手じゃないかもしれないけど……」
ルイはそのセーターを手に取ると、温かい笑顔を見せた。
「上手にできてるな。エマの気持ちが伝わってくる」
「よかった!」
ルイはセーターをじっと見つめながら、やや照れくさそうに言った。
「ヴァルディアは暑いから、また寒い地域に行ったときに着るよ」
エマはその言葉に安心したように微笑む。二人は、静かな夜に包まれながら、さらに温かい時間を過ごした。




