74. フレア・ソルヴィール
ルイとエマは、貴族の街サンドリオで穏やかな日々を過ごしていた。
ルイはインフィナイトの箱の中にこもり、次の目的地や古代魔法具の情報を調べるのに没頭。一方で、エマは久しぶりの平和な街を散策し、買い物や観光を楽しんでいた。
ある晴れた午後、エマが市場で食材や小物を買っていると、人混みの中から誰かの大きな声が響いた。
「おい、聞いたか!? 二か月後にヴァルディアで魔法の闘技大会があるらしいぞ! 優勝賞品は……なんと古代魔法具の『フレア・ソルヴィール』だって!」
その言葉にエマは驚き、話していた男性に駆け寄った。彼の持っていた新聞を譲ってもらい、急いで記事に目を通す。
新聞には、大規模な闘技大会が開催されること、そしてその優勝賞品として火の古代魔法具「フレア・ソルヴィール」が掲げられていると書かれていた。
「古代魔法具が、こんな形で……」
動揺を隠せないまま、エマは新聞を手に宿へ急いだ。
「ルイ! 大変!」
エマが部屋に飛び込むと、インフィナイトの箱から出てきたばかりのルイが顔を上げた。
「どうした、エマ? そんなに慌てて」
エマは新聞を差し出し、記事を指差した。
「これを見て!」
ルイが新聞に目を通すと、その表情は一瞬驚きに変わり、次いで深い考え込むようなものに変わった。
「フレア・ソルヴィール……」
短くつぶやき、新聞を置いたルイはため息をつく。
「これは予想外だ。次の目的地はフレア・ソルヴィールの在処を探るつもりだった。だが、こうして大会の賞品として表に出ているとなると……」
「……罠かもしれないよね?」エマが不安げに尋ねる。
「その可能性は高い」ルイは真剣な顔で頷く。
「他の古代魔法具を持つ者をおびき寄せる意図があるかもしれない。だが、フレア・ソルヴィールを放っておくわけにはいかない。誰かの手に渡れば厄介だ。俺が大会に参加する」
エマはその言葉に驚きながらも、きっぱりと告げた。
「それなら、私も一緒に参加する! ルイだけを危険な目に遭わせられない!」
しかしルイは首を振り、優しいながらも断固とした口調で答える。
「気持ちはありがたいが、エマ。闘技大会は魔法だけでなく策略や裏切りも絡む厳しい場だ。エマには、俺をサポートする立場でいてほしい」
「でも……」
「エマがいなければ、フロスト・ソルヴィールは手に入らなかった。エマの力は必要だ。だからこそ、観客席で待機して、いざという時に備えていてくれ」
真剣な目で見つめられ、エマはしぶしぶうなずいた。
「……わかった。でも、絶対に無理しないでね」
「心配ない。必ず勝つ」
ルイは自信を込めて微笑む。その言葉に、エマもわずかに笑顔を返した。




