表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第三章 グレイシャルム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/207

73. 満月

 ルイとエマは、遠く離れた南方の街サンドリオへワープで到着した。街に一歩足を踏み入れると、冷え切った山道とは全く違う光景が広がっていた。


「あつい……」


 エマは額に浮かんだ汗を拭い、コートを脱ぎながら辺りを見渡した。


 この街は貴族の館が立ち並ぶ平穏な場所で、手入れの行き届いた庭園や、白い大理石の建物が整然と並んでいる。中心には優雅な噴水広場があり、水の音が心地よく響いていた。陽光が柔らかに街全体を包み込み、どこか夢のような雰囲気を醸し出している。


「なんだか、すごく安心する場所だね……」

「ここなら、追ってがあってもそう簡単には手出しできないだろう。さすがに俺も疲れた。この街で少し休もう」


 ルイが静かに言い、二人は街中を歩き始めた。貴族たちが豪華な馬車で通りを行き交い、道端には果物や花を売る露店が並んでいる。彼らの談笑や明るい笑顔が、街の平穏を物語っていた。


 やがて小さな宿を見つけ、受付で部屋を借りた。宿の内装も美しく、絵画や花瓶が上品に飾られている。部屋に入ると、エマはベッドに腰を下ろして深く息を吐いた。


「なんだか、ようやく落ち着けるね……」


 そんなエマを見つめながら、ルイが真剣な表情で言った。


「エマ、フロスト・ソルヴィールは俺が預かっていてもいいか? エマが持っていると、真っ先に狙われる。俺が持っていれば、少なくとも簡単には奪われない」


 エマは少し悩んだが、ルイの言葉にうなずき、胸元のフロスト・ソルヴィールを取り出した。それを手に取ったルイは、慎重にそれを見つめ、手のひらに乗せて呪文を唱え始めた。


「フォルマ・トランシス」


 すると、フロスト・ソルヴィールが淡い光を放ち、まるで普通のソルヴィールのような見た目へと姿を変えた。


「これで、よほどの魔法使いでなければ古代魔法具だと見抜けない」


 ルイはそう言って、形を変えたソルヴィールをポケットへとしまった。その様子を見たエマは安心したように微笑んだ。


「ありがとう、ルイ」

「いや、エマがいなければフロスト・ソルヴィールは手に入らなかった。本当にありがとう、エマ」


 突然の感謝に、エマは驚きながらも照れたように笑った。


「え、そんな……私、ほとんど何もしてないよ」

「いや、エマの存在が重要だった。だからこそ、もう一つ頼みたいことがある」


 ルイの真剣な眼差しに、エマは少し緊張した様子で返事をした。


「頼みたいこと?」

「エマは、人や生物の心を動かす魔法に長けている。それに、操られることもない。だから、これから俺たちが古代魔法具をもっと集めるようになったとき、もし俺がその力に影響されることがあったら……エマならきっと俺を止められると思う」


 エマはルイの言葉に一瞬息を呑んだが、しっかりとうなずいた。


「もちろん、そんな時が来たら全力で止めるよ。でも……ルイなら大丈夫だと思う」


 ルイは小さく微笑みながら「頼んだぞ」とだけ言った。その後、ルイが窓の外を見上げて、ぽつりと言った。


「今夜は、おそらく満月だ」


 エマは不思議そうに首をかしげた。


「それがどうしたの?」


 ルイは少し意地悪そうな笑みを浮かべた。


「楽しみにしておけ」


 夜が更けると、街全体が活気づき始めた。宿の窓から外を見下ろしたエマは、驚きの声をあげた。


「え、みんな……空を飛んでる!」


 絨毯やほうきに乗った街の人々が、満月の明るい光の下、自由に空を舞っているのが見えた。色とりどりの光が夜空を彩り、幻想的な光景が広がっていた。


 ルイは部屋の隅から何かを取り出した。


「おれたちも行くぞ」


 それは、インフィナイトの箱から取り出した絨毯だった。ルイが絨毯を広げ、エマを招き入れるように乗るよう促した。


「怖いかもしれないが、しっかりつかまっていれば大丈夫だ」


 エマが絨毯の端に座り、ルイの背中につかまると、絨毯はふわりと宙に浮いた。そして、二人は夜空へと飛び立った。


「わあ……!」


 エマは満点の星空と、下で輝く街の灯りに感動して声を漏らした。


 すると、突然、空中で花火が打ち上げられた。色とりどりの花火が夜空に咲き誇り、街中が歓声に包まれる。


「この街では、この時期の満月の日にこうして夜のイベントをやっているんだ。空を飛びながら花火を見るのは最高だろ?」


 エマは感動した面持ちでうなずき、満面の笑みを浮かべた。


「すごい! 本当に夢みたい!」


 ルイはそんなエマの姿を見て、満足そうに微笑んだ。満月の光と花火の輝きが、二人の旅に一瞬の平穏と喜びを与えていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!第三章は以上で完結です!


少しでも面白い、続きが気になると思われましたら、是非ブックマーク登録か評価(↓の☆)していただけると大変励みになります!


引き続き頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ