7. アルカナ魔法学校
「ここが……アルカナ魔法学校?」
エマの目の前には、とても大きな鉄柵の門があり、その向こう側には荘厳なゴシック建築の城のような建物がいくつも立っていた。大理石の階段が門の方まで続き、その両脇には並木道が広がり、鮮やかな緑と白い花が風に揺れている。
階段を降りて並木道を抜けると、そこには広大な街が広がっていた。石畳の通りが縦横に伸び、両脇にはさまざまな建物が立ち並んでいる。魔法書専門の書店や魔法薬の調合器具を売る店、さらには奇妙な生き物が動き回る店もある。通りの角には、小さなカフェが店先に丸いテーブルと椅子を並べ、そこにはローブを着た学生たちの姿が見えた。
「アルカナ魔法学校は、街全体が学びと生活の場なんだ。このエリアだけで必要なものはすべて揃うようになっている」
エマが空を見上げると、上空に浮かぶ建物がいくつもあり、一番上には荘厳な佇まいを見せる巨大な建物がまるで天空の王冠のように輝いていた。
「訪問者が泊まれる宿がある。今日はそこでゆっくり休むと良い」
そう言って、ルイは宿の方まで案内してくれた。
(ん……? 気のせいかな?)
宿の前までたどり着くと、エマは何やら視線を感じたが、周りには通行人がいるだけだった。
「俺は用があるから、一度寮の方に戻る。学校の地図を渡しておくから、もし出かけるならこれを持っていけ」
「ありがとう」
ルイがその場を去った後、エマは宿の中に入っていった。目の前には受付があり、男性が座って本を読んでいた。
「すみません、今日ここで泊まりたいんですが」
「予約の方かな? ソルヴィールを出して」
ソルヴィールはルイからもらったネックレスのことだ。ソルヴィールはこの世界での身分証としてや、お金のやりとりにも使えるらしい。
エマがソルヴィールを男性の方に差し出すと、彼は石の上に手をかざした。すると、石が優しい光を放って輝き始めた。
「うん、エマ・ブラウンさんね。二階に上がってすぐ正面の部屋を使っていいよ」
「ありがとうございます」
エマは早速二階に上がり、部屋の中へと入った。
(学校の中を色々と見て回りたいけど……明日は試験だし、今日はここでルイからもらった地図を見るだけにしようかな)
エマが部屋の中を軽く見渡すと、部屋は広々としていて、落ち着いた木の香りが漂っている。古いけれど手入れの行き届いた木製の家具が並び、窓からは街の風景が見えた。ローブ姿の学生たちや、空中をふわふわと移動する乗り物が見え、魔法の世界での生活が目の前に広がっていることを感じた。
ベッドの横に腰を下ろし、ルイから渡された地図を広げる。地図は魔法によって自動的に動き、街全体の建物や通りが立体的に浮かび上がっていた。アルカナ魔法学校は本当に一つの街のようで、教室や研究施設だけでなく、図書館や、競技場のようなエリアまである。地図の上部には、天空に浮かぶ建物の描写もあり、一番上の建物には「アーク・カレッジ」と書かれていた。
地図を眺めながら、エマの胸には不安と興奮が入り混じった感情が広がっていく。
(この場所で本当にやっていけるのかな。でも、今は考えても仕方ないよね。明日の試験に集中しなきゃ)
エマは地図を折りたたみ、ベッドの横に置いた。そして窓を閉め、ルイや両親の言葉を思い出して深呼吸をした。
「明日はきっと大丈夫」
そう自分に言い聞かせると、エマはそのままベッドに潜り込み、瞼を閉じた。外からは街の賑やかな音が聞こえてきたが、少しずつ遠ざかるように感じながら、エマは深い眠りに落ちていった。