68. 求める者
ルイは険しい顔をしながら、ゆっくりと結界に近づいた。そして手をかざし、魔力を込めて結界を破壊しようとする。空気がピリピリと張り詰め、彼の魔力が結界に流れ込んでいく。しかし次の瞬間、結界が青白く輝き始め、ルイの魔力を反射するように大きな衝撃波を放った。
「っ……く!」
ルイはわずかに後退したが、すぐにその場に踏みとどまる。彼の周囲には防御のバリアが広がり、結界の衝撃波を完全に弾き返していた。
「ルイ、大丈夫!?」
エマは心配そうに声をかけるが、ルイは冷静に答えた。
「問題ない。だが、この結界……簡単には破れないな」
その瞬間、結界の中から恐ろしい咆哮が響き渡った。次の瞬間、巨大な氷の魔法生物が姿を現した。それはまるで山そのものが動き出したかのような圧倒的な存在感を持つ、氷でできた巨人だった。
「くそ……!」
ルイは表情を引き締め、魔力を再び練り上げた。氷の巨人が巨大な拳を振り下ろすと同時に、ルイは冷静にその攻撃を迎え撃つための魔法を唱えた。
「ディフェンシオ・グラシアリス」
ルイの魔力が空間を支配し、周囲に強力な氷の壁を作り出す。氷の巨人がその拳を振り下ろすが、ルイの防壁はまるで何事もないかのように巨人の力を受け止めた。
「どうするの……!?」
エマは、ルイが巨人と対戦するのを見ながら、何かを必死に思い出そうとしていた。そして、ふと頭をよぎったのは学長から渡されたアウリスの鏡だった。
「困ったときに正しい道を示してくれる……」
その言葉が、エマの心に深く響いた。エマは鞄から鏡を取り出し、急いで覗き込んだ。鏡に映し出されたのは、結界の中で微かに光るフロスト・ソルヴィールだった。
「何で……それだけ?」
エマは呆然とし、鏡を持つ手が震えた。しかし、ふと心の中に温かい何かが湧き上がるのを感じた。そして、心の声が囁いたように思えた。
「もしかして……」
エマは首にかけていたソルヴィールを外し、そっと結界に手を伸ばした。その瞬間、驚くべきことに、結界が抵抗することなくエマの手を受け入れた。まるで、彼女の意図を理解しているかのように、結界が静かにその道を開いていった。
エマはそのままフロスト・ソルヴィールを取り出すことができた。手にしたその瞬間、彼女はその冷たさの中に、どこか温かさを感じた。
途端に氷の巨人が崩れ始め、粉雪のように消えていく。ルイは驚きながらも、結界が完全に消えたことを確認し、エマの方に駆け寄った。
「エマ、どうやって……?」
エマは首を横に振りながら、手に持ったフロスト・ソルヴィールを見つめた。
「わからない……でも、取れる気がしたの」
ルイは一瞬考え込んだ後、静かに言った。
「魔力を持たない者や、力を求めない者だけを受け入れる結界だったのかもしれない。助かったよ。ありがとう、エマ」
「ううん。ルイがいなかったらここまで来れてないよ」
エマは微笑み、心からそう言った。




