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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第三章 グレイシャルム

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61. 探検

 ルイとエマはウィンドフェルドの中心部にある宿屋を見つけた。古い木造の建物ながら、魔法で清潔に保たれているようで、居心地の良さが漂っている。


 「今日はここに泊まろう。物資を調達したら、明日にでも出発するぞ」とルイが言い、鍵を受け取る。「エマも欲しいものがあれば、少し街を見てくるといい。気をつけてな」


 「わかった! 少しだけ行ってくるね」とエマはリュックを部屋に置き、街へと足を踏み出した。


 エマは市場に向かい、その光景に心を奪われた。鮮やかに並ぶ魔法で育てられた野菜や果物たちは、ただの食材というより、まるで芸術品のようだった。虹色に輝くシャイニングアップルや、宙に浮かぶスイートメロンが美しく並んでいる。


 「わあ、本当にすごい……」エマは思わず声を漏らした。


 すると、果物を売っている陽気なおじさんが彼女に話しかけてきた。「お嬢ちゃん、旅人かい? ウィンドフェルドは安全で食事も美味しいところだから、ゆっくりしていきなよ」


 エマは微笑んで答える。「本当に綺麗な街ですね! こんなに色鮮やかな果物、初めて見ました!」


 おじさんは誇らしげに笑った。「もちろんさ! 天候魔法があるから何でもできちゃうんだ。この辺りにはドラゴンも生息しているけど、雷魔法の防御結界があるおかげで、街には近づかないんだよ」


「ドラゴン……!」


 エマはハッとして、アルカナ魔法学校の学長室で見たドラゴンのことを思い出した。「そのドラゴンって、どの辺りにいるんですか?」


「北の崖沿いだね。山脈の近くに生息している。興味があるなら行ってみるといいが、気をつけるんだぞ。野生のドラゴンは気まぐれだからな」


 エマはおじさんに礼を言い、その方向へ向かうことにした。


 北の崖沿いに近づくにつれ、風が強くなり、空気が冷たくなっていく。遠くからドラゴンの咆哮が聞こえ、エマの心は少し緊張しつつも興奮で高鳴っていた。


 やがて、崖の先に巨大なドラゴンが現れた。その鱗は銀色に輝き、鋭い眼光でエマを見据えている。風が吹き抜ける中、ドラゴンはゆっくりとエマに近づいてきた。


「大丈夫……大丈夫……」


 エマは自分に言い聞かせるように呟きながら、ソルヴィールをそっと握りしめた。


 ドラゴンが大きく咆哮すると、エマはその音に怯えながらも冷静を保ち、魔法の言葉を口にし始めた。


「カレンディア・セリス……私と共に、心を一つに」


 すると、ネックレスが柔らかな光を放ち、エマの声はまるで風に乗るようにドラゴンの耳に届いた。ドラゴンは一瞬動きを止め、その目に好奇心の色を浮かべた。


「怖くないよ。私は君を傷つけるつもりはない。ただ、君のことを知りたいだけ」


 エマの声に応じるように、ドラゴンは少しずつ警戒を解いていく。そして、エマがそっと手を差し出すと、ドラゴンはゆっくりとその巨大な頭を近づけ、彼女の手に鼻先を触れさせた。


「すごい……」


 エマはドラゴンの温かな息を感じながら呟いた。


 ドラゴンは軽く咆哮をあげると、空に舞い上がり、しばらくして再び崖に降り立った。その仕草はまるで、エマを受け入れたという証のようだった。


(『カレンディア・セリス』だけはなぜかすごい上手くいく気がするんだよな……)


 エマは心の中でそう呟くと、再びソルヴィールを握りしめた。


「ディミヌス・フォルマ」


 エマが呪文を唱えると、ドラゴンの体がふわりと光に包まれ、その巨体が徐々に縮小していった。数秒後、そこに立っていたのは、手のひらに乗るほどの小さなドラゴンだった。


「よし、これで一緒に行けるね!」


 エマは笑顔で小さなドラゴンをそっと持ち上げ、自分の肩に乗せた。ドラゴンは少し戸惑った様子を見せつつも、肩にしっかりと掴まり、満足そうに鼻を鳴らしている。


「よし、ゴンちゃん。行こう!」


 エマはドラゴンに新しい名前をつけ、宿へと戻る道を歩き出した。


 宿に戻ると、ルイが地図を広げながら次の行程を考えていた。エマが部屋に入ると、ルイは顔を上げ、「どうだった?」と何気なく聞いた。しかし、エマの肩に乗っている小さなドラゴンを見た瞬間、彼の表情が固まった。


「……なんだ、それは?」


 エマはにっこりと笑いながら言った。


「紹介するね! ドラゴンのゴンちゃん!」


 ルイは目を見開いてドラゴンを見つめた後、頭を抱えた。


「欲しいものがあればとは言ったが、まさかドラゴンを連れてくるとは……」

「意外と可愛いでしょ?」


 エマは嬉しそうにゴンちゃんを撫でる。ゴンちゃんは満足げにルイを見上げ、ピッと小さな咆哮をあげた。


 エマは少し間を置いてから、ためらうように口を開いた。


「あのさ、旅の途中まででも、ゴンちゃんに乗せて行ってもらえないかなと思って……」


 その提案に、ルイは驚いたように目を丸くしたが、すぐに冷静な表情に戻った。


「それは確かに助かる。移動速度も速くなるし、何かあったときに逃げる手段としても心強いな」


 エマは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「よかった! じゃあ、ゴンちゃんにも相談してみるね。きっと喜んで手伝ってくれると思う!」


 ゴンちゃんはまるで二人の会話を理解しているかのように、小さな咆哮をあげ、羽を軽く広げてみせた。それを見たルイは微笑みながらつぶやいた。


「明日からの旅が少し楽になりそうだな」


 こうして、エマたちはゴンちゃんを頼りにしながら次の目的地へ向けて新たな準備を始めた。

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