60. ウィンドフェルド
列車がウィンドフェルドの駅に到着した瞬間、エマは窓の外に広がる光景に目を見張った。
畑一面が輝くような緑色を放ち、上空にはふんわりと柔らかな雨雲が漂っている。雨は小さな粒子となって降り注ぎ、作物たちに命を吹き込むようにその葉を輝かせていた。どこか神秘的な雰囲気をまとったこの光景に、エマはしばらく言葉を失った。
「ここ、本当に綺麗だね…」
エマは息を呑むように呟いた。
「天候魔法の街だからな」とルイが隣で説明する。
「あの雨も風も、すべて街の責任者たちが魔法でコントロールしているんだ。この地域は天候を操る魔法において最先端なんだ」
ホームを降りると、彼らを包み込む空気が少し湿り気を帯びていることに気づいた。その空気は不思議と心地よく、魔法の力が浸透しているのを感じさせる。
エマが見渡すと、遠くにはいくつもの大きな風車が回転しているのが目に入った。その風車もまた、ただの装飾ではない。風の魔法によって力強く回転し、街全体のエネルギー源として機能している。
「エマ、見えるか? あれが風車だ」とルイが指差した。
「単なる農業用じゃない。街全体を支える魔法の装置でもあるんだ」
エマは風車が生む魔法エネルギーの光の粒子が空気中に漂っているのをじっと見つめた。それらは肉眼で見えるほどに明るく輝き、風に流されながら街全体を包み込むように散らばっていく。その光景に、エマは思わず微笑みながら心を奪われていた。
「家が風に揺れてる……」
エマが視線を巡らせると、少し離れた空中には浮遊する家屋がいくつも点在しているのが見えた。建物は軽やかに宙に浮かびながら、穏やかに風に揺れている。
「ウィンドフェルドの一部では、風の魔法を活用して家を浮かせているんだ。あれがこの街の特徴のひとつだな」とルイが補足した。
「風に乗っている感覚は慣れるまで少し怖いらしいけど、一度慣れれば快適だと聞く」
エマは感嘆の声を漏らしながら浮遊する家屋に見惚れた。軽やかに揺れる家々は、まるでこの土地の住人たちが魔法と共存している象徴のようだった。
やがて彼らは市場の方に目を向けた。そこには、魔法で育てられた野菜や果物が所狭しと並べられていた。特にエマの目を引いたのは、虹色に光るリンゴ――シャイニングアップルだ。
「これがさっき話していたシャイニングアップルだ。魔法の力を吸収して育つから、味も普通の果物とは全然違うんだ」とルイが教えてくれた。
エマはその美しいリンゴに手を伸ばしながら、ウィンドフェルドの特別さを改めて感じた。
「この街、ほんとに魔法に溢れてるね。なんだか、この場所で何か特別なことが起こりそうな気がする」
ルイは静かに頷きながら答えた。
「この街には古い魔法の痕跡も多く残されている。その分、危険な部分もある。気を抜かずにいこう」
エマはその言葉を胸に刻みながら、ウィンドフェルドでの新しい冒険に期待を膨らませていた。




