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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第一章 アルカナ魔法学校
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6. 魔法の世界へ

「アクア・スクートゥム!」


 エマが呪文を唱えると、杖の先から水の壁が現れ、揺れながらも確固たる形を保っていた。今日もエマは水の盾を操る練習をしている。すると、そこにルイがやってきた。


「随分と魔力のコントロールができるようになってきたな」

「もう半年も練習してるからね!」

「じゃあ、そろそろ行くぞ」

「うん!」


 そう、今日はエマが初めてアルカナ魔法学校へ行く日。試験はいよいよ明日だ。ルイが学校まで案内してくれることになっているが、どうやらまずはロンドンのセント・パンクラス駅に向かうらしい。ロンドンの主要ターミナルの一つで、国際列車ユーロスターの起終点でもある。


 エマの父親トーマスに車で送ってもらい、セント・パンクラス駅に到着した。


「エマ、お父さんもお母さんも応援してるから。楽しんでおいで」

「楽しめるかなあ……でもありがとう!」


 そう言って、ルイと一緒に駅の中へと向かっていった。中に入ると、駅はいつもと同じように観光客と通勤者で混雑していた。中央には大きなロングケース・クロック――縦に長い機械式の大型置時計――が置いてある。


(あんなところに時計なんかあったっけ……)


 「ここだ」とルイが言い、到着したのはその時計の目の前だった。ルイが手を触れると、時計の針がものすごいスピードでぐるぐると回り、時針と分針が12時の方向を指して止まった。次の瞬間、時計の扉がカチリと音を立てて開き、地下へと続く秘密の階段が現れた。


「すごい! こんな隠し扉があったなんて!」


 エマが驚いていると、通行人が時計をすり抜けるように通り過ぎて行った。


「これは魔力のあるものにしか見えないし、触ることもできない。さあ、いくぞ」


 階段を降りていくルイの後ろを、期待に胸を膨らませながらエマもついて行った。


 階段を下りていくと、徐々に笑い声や風の音、動物のような泣き声などが聞こえてきた。最後の一段を下りた瞬間、エマは目の前に広がった光景を見て、思わず足を止めた。


 そこには巨大な地下空間が広がっていたのだ。天井はまるで無限のように続いていて、空には星空のようにきらめく光が無数に浮かんでいる。いくつもの列車が並び、線路は空の方へ続いている。宙に浮く蒸気機関車が、ゆっくりとプラットフォームに停車し、車両から降りてくる人々はローブをひらめかせながら談笑している。


「これがアストラル・ターミナルだ。人間界にある世界中の主要な駅とつながっている」


 エマが周りを見渡すと、駅構内にはたくさんのショップが並んでいた。小さな魔法書店では、店主の周りにいくつもの本が浮かんでいる。魔法薬のお店からは何やらカラフルな蒸気が溢れ出ている。店の前には、見たこともない生物を連れて何かを購入している人が立っていた。


「すごい……まるで魔法みたい!」

「魔法だ。いくぞ」

「え? どこに行くの?」


 ルイは人混みを避けるように、ターミナルの壁の方へと進んで行った。壁の一角の古びた扉に着くと、「入るぞ」と言ってエマの手を取り、部屋の中へと入って行った。


「アルカナ魔法学校へはここから行く」

「え?」


 部屋の中には、ソファーやローテーブルが置かれ、小さな金属製のランプが柔らかい光を放っていた。中央の奥には大きな暖炉があり、内側には炎ではなく僅かに渦巻く光が見える。壁際にはクローゼットがあり、ローブや帽子が丁寧に掛けられている。


「列車には乗らないの?」

「俺はこの部屋を利用する権利を持っている。俺がいない時はアルカナ魔法学校行きの列車で移動してくれ」

「権利? ここからどうやって移動するの?」

「フェリスパウダーを使う。まずはローブを着るぞ」


 そう言って、ルイはクローゼットにかかっていたローブをエマに渡し、ルイも自分のローブを着用した。エマのローブは全身黒なのに対し、ルイのローブは胸元に紋章のようなものがあり、肩から背中にかけて美しいフードが垂れ下がっている。フードの裏地は、青と銀の絹で彩られており、光の加減で上品な輝きを放っているようだ。


「フェリスパウダーって確かワープ用の魔法道具だっけ……」

「そうだ。そこの暖炉からワープする」

「そのパウダーってすごい希少なんじゃ……」

「まあな」


 エマとルイは二人で暖炉に立ち、ルイは小さな袋の中に入っているパウダーを手に取った。そして、自分とエマの頭にかかるように、パウダーを上へと投げた。パウダーが宙に舞うと、細かな粒が輝きながら渦を描き、二人を包み込んだ。


 フェリスパウダーによって、エマの視界は虹色に染まった。そして次の瞬間、足元が地面に触れる感触を取り戻した――そこは、アルカナ魔法学校への入り口だった。

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