59. 才能
夕暮れ時、エマはクローキャットのクロをリュックに忍ばせ、全身を黒のローブで包み列車に乗り込んだ。隣には、普段とは異なるシンプルなローブをまとったルイの姿がある。
「アルカナ魔法学校は、学長と教授たちが張った結界に守られている。その結界を破れる者は今のところいない。学校内は安全だが、ここから先は違う。慎重に行こう」
ルイの言葉にエマは頷き、改めてこれからの旅路への心構えを固めた。
目指すのはウィンドフェルド。道中は三日間に及ぶ長い旅となるが、必要な荷物はすべてインフィナイトの箱に収納済み。二人は軽装のまま、列車内の指定された個室に向かった。
ドアを開けると、想像以上に広々とした部屋が広がっている。ベッド、テーブル、ソファ、小さなキッチン、そしてトイレとシャワールームまで完備されていた。
エマは驚きながらも、その広さに感心している。
「こんなに広い部屋が列車の中にあるなんて、不思議だね」
「だろう? 急ぐ必要はない。しばらくリラックスして、休むといい」
こうして、ウィンドフェルド行きの列車は静かに出発し、二人の旅が始まった。
数時間後、エマとルイは列車のレストランルームに足を運んだ。二人は席に座り、久しぶりにゆっくりとした食事を楽しんだ。
「こうして二人で食事するの、久しぶりだね」
「確かに、落ち着いて食べるのは久しぶりだ」
食事をしながら、ルイはふと真剣な表情で話し始めた。
「エマには、魔法生物を扱う才能があるかもしれない。確証はない。ただ、今後、危険な魔法生物に出会ったとき、その才能が役に立つかもしれない」
エマは少し驚き、何とも言えない表情でルイを見た。
「そうかな……?」
「ああ。エマのソルヴィールの色が変わっただろ? おそらくその才能に目覚めたんだろう」
ルイは真剣に言った。
「ただ、エマはまだ自分の能力を完全に理解していない。だから、慎重に行動した方がいい」
「うん、わかった」
そう答え、エマはふと窓の外に目を向けた。列車の車窓からは、徐々に夜の闇が広がってきていた。星空が広がり、風景がすれ違う中で、エマの胸の中にも静かな期待が芽生えていた。




