58. 出発の準備
学長への報告を終え、エマとルイは出発の準備を整えていた。
「ルイ、まずはどこを目指すの?」
「北の果てにある都市、グレイシャルムを目指す。そこに氷の古代魔法具『フロスト・ソルヴィール』があるはずだ」
「グレイシャルム? でも、その辺りって……治安が悪くて、魔法生物も危険だって聞いたことがある」
ルイは少し黙った後、頷いた。
「確かにな。でも、まずは途中の都市ウィンドフェルドまで列車で行く」
「ウィンドフェルドまではどれくらいの距離があるの?」
「かなり遠い。列車で数日はかかる。そこから先は、さらに険しい道のりだ。だが、急がないと『フロスト・ソルヴィール』を狙う者たちに先を越されるかもしれない」
エマは一度考え込み、目を伏せた後に言った。
「ルイ、旅に出る前に、皆にお別れを言いたいんだけど……」
その言葉にルイは一瞬だけ目を細めたが、すぐにため息をつき、肩をすくめた。
「さっとすませてこい」
エマは驚いて目を見開いた後、思わず笑みをこぼした。
「ありがとう、ルイ!」
「早く行け」
その後、エマはルミナス・カレッジに戻り、コモンルームにいた友人たちに声をかけた。ソフィア、フィン、オスカー、リリーがテーブルを囲んで笑い合っている。
「エマ!」ソフィアがエマを見つけて手を振った。エマは少し緊張しながら歩み寄り、笑顔を作った。
「ちょっと話したいことがあるの」
「どうした? 顔が真剣だな」とフィンが眉を上げる。
エマは一瞬ためらい、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「長期留学に行くことになったの……急な話でごめん」
その場の空気が一瞬静まり返る。
「また留学?」とリリーが驚きを隠せない様子でつぶやく。
「どこに行くの?」オスカーが疑わしげに尋ねる。
「ごめん、場所は言えないの。でも、大切なことなの。しばらく戻れないかもしれないけど、必ず帰ってくるから」
友人たちはしばし沈黙した後、少しずつ頷き合った。
ソフィアがそっとエマの手を握りしめた。
「寂しいけど、応援するわ。何かあったら絶対知らせてね」
フィンはにやりと笑い、「ま、エマなら絶対無事に戻ってくるだろうな。帰ってきたら、冒険話を聞かせてくれよ!」
リリーは目を潤ませながら「気をつけてね」と言い、オスカーは「戻ったらまた一緒にバカ騒ぎしよう」と拳を軽く突き合わせた。
こうしてエマは、友人たちに別れを告げ、温かな言葉を胸に刻んだ。そしてルイと共に、北の地への旅立ちの時を迎えた。




