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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第二章 マーレディア・アカデミー

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53. 真実

 静寂が戻った屋上で、ルイはすぐにエマの肩を掴み、真剣な表情で問いかけた。


「ケガを見せてみろ」


 その言葉に、エマは一瞬戸惑ったが、彼の真剣な眼差しに気圧されるように頷いた。ルイはそっと彼女のブラウスの裾を持ち上げ、腹部を確認した。


 そこには軽い打撲の痕が残っているだけで、致命的な傷は見当たらなかった。


「……大丈夫だ」


 ルイは安堵の息をつきながら、エマを見つめた。胸の中で張り詰めていたものが、ようやくほどけていく。


 エマは少し照れくさそうに微笑み、「たぶん、誕生日にみんなからもらったシールドパウダーをローブにかけてたからかな」と説明した。


 ルイはその言葉を聞くと、エマをぎゅっと抱きしめた。彼の腕の力強さに、エマは驚きながらも安心感を覚えた。


「本当に……よかった」


 ルイの声はかすかに震えていた。それは彼がどれほどエマを守りたかったかを物語っていた。


 その時、重厚な足音が屋上に響き、アルカナ魔法学校の学長が現れた。威厳に満ちた彼の姿を見て、ルイもエマも少し背筋を正した。


 学長は穏やかな表情で二人を見つめながら、ゆっくりと口を開いた。


「見事じゃったよ、二人とも」


 エマが困惑した顔を浮かべる中、学長は続けた。


「魔法連盟がこの学校にいる間、何が起きるかわからなかった。エマくんが襲われ、もしルイくんが暴走したら、取り返しのつかないことになると思っておった。だから、エマくんを短期留学に行かせることで、リスクを減らそうと考えたのじゃ」


 学長は深いため息をつき、続けた。


「魔法連盟の三人がレクス・ソルヴィールを狙っておることを知っておったが、まさかここまで強硬手段を取るとは……」


 ルイは学長の話を聞きながらも、ふと屋上に倒れている教授の姿に目を向けた。エマもそれに気づき、ルイに問いかける。


「そこに倒れている教授は……どういうこと?」


 ルイは一瞬躊躇したが、静かに説明を始めた。


「俺が部屋から出て学長に会いに行っていた間に、学長が俺を守るために動いてくれた。教授が身代わりとして俺になりすまして戻ってきたんだ」

「そうじゃ。しかし、心配ない。すぐに治療する。そしてエマくん、君はルイくんの暴走を見事に止めた。どうやらワシは見誤っていたようじゃのう」


 エマとルイは複雑な思いを抱えながらも、学長の言葉を受け止めた。


 屋上に残る緊張感を切り裂くように、アレクサンドラが声を荒げた。


「こんなことをしてタダで済むと思っているの!?」


 彼女の鋭い視線がルイを貫く。だが、ルイは動じることなく、真剣な表情で言い返した。


「それはこっちのセリフだ」


 彼の声は静かだが、その一言には圧倒的な威圧感が込められていた。


 ルイは自分のソルヴィールに視線を向けながら、続けた。


「お前らが探しているレクス・ソルヴィール……それは、これだ」


 そう言うと、ルイは自分のソルヴィールに杖を向けた。その瞬間、ソルヴィールが黄金色に輝き始め、周囲の空気が震える。そして、ルイの胸元の宝石がゆっくりと変化し始めた。それは、今までの姿を脱ぎ捨てるように本来の姿を現す――古代魔法具「レクス・ソルヴィール」。


 アレクサンドラの目が釘付けになる。


「それを今すぐ渡しなさい!」


 彼女は怒りを抑えきれず、命令するように叫んだ。しかし、ルイはアレクサンドラに一歩近づき、静かに言った。


「俺の名は、レオン・ルイ・イヴァン・フェルマール」


 その名を聞いた瞬間、アレクサンドラ、リチャード、セリアの表情が凍りついた。ルイはさらに続ける。


「俺にはレクス・ソルヴィールを守る使命がある」


 セリアが驚きのあまり呟いた。


「フェルマール家は壊滅したはず……!」


 ルイの目が鋭く光る。


「その通りだ。俺は唯一の生き残りであり、レクス・ソルヴィールの正統な継承者だ。そして、この魔法具はフェルマール家の人間でなければ扱えない」


 彼の断言に、魔法連盟の三人は言葉を失った。アレクサンドラは悔しそうに唇を噛み締めたが、杖を下ろすしかなかった。


 リチャードが小声で言った。


「撤退しよう、ここでは分が悪い」


 アレクサンドラは怒りを滲ませた表情でルイを睨みつけながらも、結局引き下がることを選んだ。セリアとリチャードを従え、彼女たちは魔法陣を展開し、その場から姿を消した。


 静まり返った屋上で、エマは驚きを隠せずにルイを見つめていた。


「ルイ……?」


 ルイはエマを一瞥しただけで黙っていた。その時、学長が重々しい足取りで二人に近づいてきた。


「これ以上は隠せなかったか」


 学長のその言葉には、どこか諦めの色が含まれていた。


「ルイくん、ワシは君を守るつもりでここまで動いてきたが、やつらがこれで諦めるとは思えん」


 学長の厳しい声が響き、ルイは静かに頷いた。


「分かっています。だから、俺が全て終わらせます」


 エマはルイの横顔を見つめ、彼の覚悟の重さを感じながらも、胸の奥に湧き上がる不安を抑えきれなかった。

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