51. 猛攻
ヴィラの巨大な姿にアレクサンドラたちは一瞬、動きを止めた。だが、次の瞬間、セリアが杖を振り上げて呪文を唱え始めた。
「こんなもので連盟が引き下がるとでも?」
セリアが冷笑を浮かべる。
セリアの放った火の魔法がヴィラに向かって飛び、屋上を灼熱の空気が包む。しかし、ヴィラはその炎を羽で軽々と払いのける。羽根に触れた炎は瞬く間に消え、ヴィラはそのままセリアを見下ろすように空中へと舞い上がった。
「甘いわね」とセリアは再び呪文を唱えようとしたが、次の瞬間、クロが地面を駆け抜け、セリアの足元に鋭い爪を突き立てた。彼女は寸前で後ろへ飛び退いたが、動揺を隠し切れない。
「リチャード!」
アレクサンドラが冷静な声で命じる。
「魔法生物を排除しなさい!」
リチャードが一歩前に出て、呪文を詠唱すると、地面から氷の刃が飛び出し、クロやクラーケンに向かって襲いかかる。しかし、その瞬間、エマの怒りが頂点に達した。彼女の体から光の奔流が溢れ出し、杖を強く握り締める。
「何すんのよ!」
エマの叫び声と共に、彼女の魔力が解放される。杖から放たれた水の奔流が氷の刃を飲み込み、空中で砕け散った。その水流はさらに勢いを増し、リチャードに迫る。
リチャードは慌てて防御魔法を展開するが、その衝撃で大きく後退する。
「この力……!」
彼が動揺の色を隠せずに呟く。
その間、ヴィラは空中で輝きをさらに増し、巨大な結晶のような光の槍を形成する。羽ばたきと共にその槍をアレクサンドラに向かって放った。アレクサンドラはすぐにバリアを展開するが、その一撃の強さに地面が揺れ、彼女は後ずさりする。
「リアナ! 加勢しなさい!」
アレクサンドラが苛立った声で命じた。リアナは深く息を吐き、エマに向き直った。
「エマ、分かる? これ以上戦えば、あなたが無事で済むとは思えない。連盟が全力で動けば、あなたとルイには逃げ場はない」
「逃げるつもりなんてない!」
エマは声を振り絞った。
「ルイを守る。それが私の決意だから!」
リアナの目がほんの一瞬だけ悲しそうに揺れた。しかし、次の瞬間、彼女はその表情を引き締め、杖を構える。
「なら……仕方ないわね」
リアナが攻撃態勢に入った瞬間、エマの側でクラーケンの触手が勢いよく振り上がり、彼女の動きを封じようとする。しかし、リアナは素早く呪文を唱え、触手を弾き返す。
エマが叫びながら杖を振り、もう一度水の奔流を放つ。ヴィラとクロ、クラーケンも全力で敵を圧倒しようと動くが、相手は百戦錬磨の魔法連盟の精鋭たちだった。
「終わりにしましょう」
アレクサンドラが冷徹な声で宣言すると、杖を高く掲げ、空中に魔法陣を展開する。その魔法陣から放たれた光の刃がヴィラに向かって飛ぶ。
ヴィラは光の刃を弾こうと羽を振るうが、敵の魔力の強さに押され、空中で揺らぐ。続けてセリアが火炎の魔法をクロに向けて放ち、クロもまた後退を余儀なくされる。
「どうしたのかしら?」
アレクサンドラが挑発するように言う。
「これがあなたの全力なの?」
「まだ……終わらせない!」
エマが歯を食いしばりながら、再び魔力を込めて杖を振る。その瞬間、ヴィラが一際強い光を放ち、周囲を眩いばかりの輝きで包んだ。
「素晴らしい力ね。でも……」
アレクサンドラが杖を振り下ろすと、空中の魔法陣がさらに拡大し、今度はエマを直接狙うかのように雷撃を放った。
クラーケンが触手を伸ばし、エマを守ろうとするが、間に合わない。雷撃がエマに直撃し、彼女の体が吹き飛ばされる。
エマの体が背後の壁に叩きつけられ、腹部に鈍い衝撃が走る。彼女は息を詰まらせ、その場に崩れ落ちた。杖は手から滑り落ち、床に転がる。
「これが学生の限界ね」とアレクサンドラが冷たく微笑む。
エマの視界がぼやけていく。耳鳴りがし、体が重く、まるで自分のものではないように感じる。
(ごめんね……ルイ……)
エマは心の中で呟いたが、声にならなかった。
その間、セリアがクラーケンを封じる呪文を唱え、触手が動かなくなり、クラーケンは苦しそうに鳴き声を上げる。
「リチャード、とどめを刺して!」アレクサンドラが命じる。
リチャードがエマに向かって魔法を放とうとしたその瞬間、ヴィラが再び輝きを放ち、全力で敵を威嚇する。しかし、アレクサンドラは一歩も引かない。
「無駄よ。その精霊も、あなたと一緒に終わるだけ」
アレクサンドラの杖が最後の呪文を紡ぎ始める。巨大な雷の剣が空中に出現し、それがエマに向かって振り下ろされようとしている。




