46. ボールパーティ
マーレディア・アカデミーでは毎年恒例のボールパーティが開催されていた。
マーレディア・アカデミーの広間は、魔法のきらめきで満たされている。天井からは水滴のような光が揺らめき、壁際には大小さまざまな水のオブジェが浮かび上がっている。中央の大きな噴水にはイルカが水でできた身体をくねらせ、楽しげに跳ね回っていた。
エマはアナ、リリアン、ノア、そしてカイラとともに、華やかな装いでパーティに参加していた。エマのドレスは、海の波をイメージしたような青いシルクで、光を受けて水面のように輝いていた。
「ねぇ、エマ、見て!」とリリアンが指さしたのは、長いテーブルの上に並べられた水でできた食器たちだ。透明なプレートやカップは、波紋が広がるようなデザインで、触れるたびに柔らかな音を立てた。
「すごい……! これ、本当に水でできてるの?」
エマが驚いて声を漏らすと、隣のノアが笑いながら説明する。
「魔法で安定させてあるんだ。落としても割れたりしない。でも、あんまり力をかけると形が崩れるから注意しろよ」
「エマ、こっち!」とアナが手招きした。彼女の向かった先には、魔法で動く魚たちが泳ぎ回る水槽のような舞台が設置されている。その上で演奏をしているのは、水を操る音楽家たちだった。音符のように形を変える水が宙に浮かび、優雅なメロディを奏でている。
一方、カイラはノアと一緒に少し離れた場所で、ウィザード・ボートレースの話をしていた。彼女はノアに向かって笑いながら話している。
「あの時、急流に入った瞬間、どうなるかと思ったけど、ノアが水流を読んでくれたから助かったのよね」
「それでも君の冷静さがなければ、転覆してたかもな」
ノアが肩をすくめて応じると、二人は声を上げて笑った。
やがて、軽快な音楽が流れ出し、広間の中央に集まった学生たちがペアを組み、ダンスを始める。
ノアがエマの隣に歩み寄り、手を差し出した。
「エマ、一緒に踊ろう」
エマは戸惑いながら首を振った。
「えっと……踊れないから、ここで見てるよ」
「踊れない? それなら練習すればいいさ」
ノアは断る隙を与えず、軽くエマの手を引いた。
「アルカナ魔法学校でもボールパーティはあるだろう? 今のうちに練習しておかないと後悔するぞ」
エマが断ろうとする間もなく、ノアに引っ張られてダンスフロアの方へと連れて行かれた。他の学生たちは思い思いのステップで踊っており、アナやリリアンも楽しげに手を取り合いながら笑い合っていた。
「いいからリラックスして、俺についてきて」
ノアはエマの手を軽く握り直し、優しくリードした。
エマは緊張でぎこちなく足を動かし始めたが、ノアの指示に従うことで少しずつ動きに慣れていく。
「うわ、全然うまくできない!」
エマが困ったように笑うと、ノアは肩をすくめて励ますように言った。
「誰だって最初はそんなもんさ」
二人が不器用ながらも楽しげに踊る姿に気づいたアナとリリアンが近づいてきた。リリアンがからかうように声を上げる。
「エマ、意外と楽しそうじゃない!」
「ねぇ、私たちも混ざろう!」
アナは笑顔で手を伸ばし、リリアンを引っ張り込んだ。
「ちょっと! もう少し見てたかったのに!」
リリアンが軽く抗議しつつも、結局一緒に踊り始める。
エマは不器用ながらも、周りの友人たちに囲まれ、次第に緊張を忘れていった。音楽と笑い声に包まれる中で、彼女はこのひとときを心から楽しんでいた。




