42. マーレディア・アカデミー
エマが船を降りると、マーレディア・アカデミーのローブを着た一人の上級生が彼女を待っていた。長い青みがかった髪をポニーテールにまとめたその女性は、柔らかな笑顔で手を振っている。
「エマ・ブラウンさん? 私はアナスタシア・リデル。短期留学中、あなたのお世話を任されたわ。一緒に学園を回りながら案内するから、ついてきて」
「よろしくお願いします、アナスタシアさん!」
「アナでいいわ」
「はい、アナさん!」
エマは緊張しながらもアナに礼儀正しく挨拶を返した。
アナはエマを連れて、アカデミー内のさまざまな場所を案内してくれた。広々とした中庭、水中生物の世話をする飼育施設、そして大きな教室の数々。アナの説明は丁寧で、エマの緊張も少しずつ和らいでいった。
「ここが私たちの誇りでもある図書館よ。少し中を見てみる?」
「図書館ですか? ぜひ!」
エマは目を輝かせながら答えた。案内された図書館は、アナが言った通り地下に広がる巨大な空間だった。
図書館の中に入ると、エマは息を呑んだ。棚の代わりに、巨大な水の柱が並び、そこに無数の本が浮かんでいる。水は薄い光を放ち、周囲を幻想的に照らしていた。
「これ、全部水の中にあるんですか?」
「そう。特別な魔法で作られた水で、本を保管しているの。この水は触っても冷たくないし、どんなに古い本でも傷むことがないわ。ほら、試してみて」
アナの勧めでエマはそっと水の中に手を入れ、1冊の本を取り出した。水は本の表面をすべるだけで、全く濡れた感じがしなかった。
「すごい……! こんな図書館、初めて見ました!」
「ここには水の魔法、回復や癒しの魔法に関する書物が多いの。授業以外でも自由に使えるから、気に入ったらいつでも来てね」
エマはうなずきながら、本棚を見上げて思った。この場所でなら、たくさんのことを学べるかもしれない、と。
図書館を後にして、次はエマが宿泊する部屋へと向かった。エマの部屋は学内寮の一角にあり、初めて足を踏み入れた瞬間、彼女は再び驚きを覚えた。
「ここがあなたの部屋よ。どう?」
部屋の中は、壁や床以外の家具が全て水でできていた。水でできた透明なテーブル、水面が柔らかく揺れるベッド、そして水のカーテンまで備え付けられている。触れると柔らかく冷たさはない。
「すごい……家具が全部水なんですね。これ、寝ても大丈夫なんですか?」
「もちろんよ。このベッドはあなたの体温に合わせて少し温かくなるから、地上のベッドと同じように寝られるわ。安心して」
アナは笑いながらエマを見つめた。
「明日から授業が始まるけど、焦らなくて大丈夫。今日はゆっくり休んでね。何か困ったことがあったらいつでも言って」
「ありがとうございます。アナさん、本当に頼りにしてます!」
「どういたしまして。それじゃあ、おやすみなさい」
アナは軽く手を振って部屋を後にした。エマは一人残され、部屋をゆっくりと見回した。
エマは水のベッドに横たわりながら、今日の出来事を思い返していた。船での冒険、クラーケンとの対峙、そして幻想的なアカデミーの内部。
「明日からの授業も楽しみだなあ……!」




