41. 巨大な魔法生物
船がマーレディア・アカデミーの近くに到着しようとしたその瞬間だった。突如、船体が大きく揺れ、エマは体勢を崩しそうになった。
「な、何!?」
船の外を見ると、巨大な影が水中に現れた。その影は徐々に姿を現し、無数の長い触手を持つ巨大なクラーケンだった。触手の一部は船の周りを巻き始め、まるで獲物を捉えようとするかのようにゆっくりと動いていた。
「来ましたね……」
案内人が冷静な声で呟いた。
「来たって、これが普通なんですか!?」
エマはパニックに陥りそうな心を抑えながら叫んだ。
「いいえ。しかし、マーレディア・アカデミーの周辺を守る存在として、クラーケンが姿を現すことは稀にあります」
案内人が杖を振ると、水中に光る魔法陣が浮かび上がった。
「行きますよ。セリーナ・シールド!」
魔法陣から放たれた青い光がクラーケンの触手を弾き返し、一瞬の隙を作り出した。しかし、クラーケンはすぐに反撃を始め、さらに強い力で触手を振り上げ、船を叩き割ろうとした。
「やめて!」
エマは叫びながら、頭の中でこれまで学んだ魔法を必死に思い出す。そして、以前授業で習った魔法生物を手懐ける呪文のことが浮かんだ。
「カ、カレンディア・セリス!」
ソルヴィールが淡い光を放ち始め、エマの周囲に柔らかな波動が広がった。その光は船を囲むように広がり、クラーケンの全身を包み込んだ。
すると、クラーケンの瞳が穏やかな輝きを帯び、触手の動きが止まった。次の瞬間、クラーケンの全身が強く光り輝き、威圧感のあったその姿はどこか神秘的で優しい雰囲気に変わった。
「……効いたの?」
エマが呟くと、クラーケンは巨大な触手をゆっくりと船の下に差し込み、船を優しく持ち上げた。そして、そのままマーレディア・アカデミーの巨大なドームへと向かい始めた。
案内人がエマの方を振り返り、目を見開いた。
「……クラーケンにその呪文を唱えている方は初めて見ました」
「えっ、その、私はただ必死で……」
エマが答える間に、船はドームの入口へと到着した。入口の巨大な扉がクラーケンの触手の動きに合わせてゆっくりと開き、船ごと内部へと吸い込まれるように進んでいく。
エマは息を呑んだ。
「これって、どうなってるの……?」
扉を抜けた先には、信じられない光景が広がっていた。
街のように広がる建物群と、そこを行き交う多くの学生たち。空を見上げると、魔法で映し出された太陽が温かい光を降り注ぎ、青空と雲が広がっていた。水中のはずなのに、まるで地上の街のような光景にエマは言葉を失った。
「これが、マーレディア・アカデミーの内部です」
案内人が説明する中、エマはその光景に見とれながら、これから始まる新しい生活に思いを馳せていた。
「すごい……本当に、すごい場所……!」




