27. ほとぼり
数日後、アルカナ魔法学校の広大な講堂に全学生と教授陣が集められた。荘厳な雰囲気が漂い、ステンドグラスから差し込む光が床を彩る中、全員が静かに学長の登場を待っていた。
やがて、講堂の中央に設置された壇上へ学長が現れる。長いローブをまとい、杖を片手に携えたその姿は、普段の穏やかな印象とは異なり、圧倒的な威厳を放っていた。壇上に立つ学長の姿が、場の全ての視線を引きつける。学長は静かに周囲を見回し、厳かに口を開いた。
「諸君。この場に集まってもらったのは、学校内で起きていた一連の事件について、そしてその解決について報告するためじゃ」
ざわめきが起きかけるが、学長が杖を軽く振ると、それだけで静寂が戻った。
「まず、何よりも大切なこと。アルカナ魔法学校に人間が存在しているという事実をここに認めよう」
講堂内が一瞬息を呑むように静まり返り、次いで軽いざわめきが広がった。エマは椅子に座りながら体を固くする。その中でいくつかの声がはっきりと聞こえた。
「人間? どういうことだ?」
「まさか、この学校に本当に入れるわけないだろう……」
そんな中、学長は視線をエマの方に向けた。
「彼女の名はエマ・ブラウン。ルミナス・カレッジの一年生じゃ。アルカナ魔法学校の1000年以上に渡る歴史の中で、初めての人間の学生。ただし、この学校に入学できるのは、我々が厳選し、魔法の世界に貢献できると判断した者のみじゃ。そして、ワシは信じておる。彼女が、我々魔法使いと人間との関係において新たな希望となる可能性を」
エマは全身に視線を浴びているのを感じながら、小さく息を呑んだ。嬉しさよりも、不安と緊張が彼女を包み込む。
学長は続けた。
「しかしながら、ある者たちはこの事実を受け入れられず、不幸な事件を引き起こした」
学長の言葉に、学生たちの間で再びざわめきが広がる。
「これらの事件はすでに解決した。関係者は厳しく処分され、二度と同じようなことが起きぬよう、対策を強化することを約束する。そして、今こそ、我々が一つになるべき時じゃ」
すると突然、壇上にルイも現れた。
「俺からも一つ話がある」
ルイの登場により、再びざわめきが起きた。
「エマをアルカナ魔法学校へ推薦したのは俺です。そして、彼女がこの学校にふさわしい人間であることは、俺が保証する」
会場が静まり返る中、ルイの強い声が響いた。学長が再び前に出て、会場を見渡す。
「諸君、ルイくんの言葉に耳を傾けてもらいたい。確かに彼女の存在は特異なものじゃ。じゃが、この変化を恐れることは、未来を閉ざすことに等しい。エマくんがこの学校に加わったことは、我々全員にとって試練であり、同時に大きな学びの機会でもある」
エマは息を整え、視線を落としたまま自分の手を見つめる。「ここにいるべきなのだろうか」と胸の中で問いかけた瞬間、隣に座っていたフィンが軽く肩を叩いた。
「大丈夫だよ、エマ。みんながすぐに理解できるわけじゃない。でも、エマならきっと乗り越えられる」
その言葉にエマはほんの少しだけ背筋を伸ばし、前を向いた。
学長は締めくくるように言葉を続ける。
「彼女を拒絶する者がいるなら、ワシは断固としてそれを許さぬ。そして、彼女を守る者がいれば、彼女の成長を助ける者がいれば、ワシはその者を称賛する。アルカナ魔法学校の名は、分け隔てない学びの場として長く続いてきた。その伝統をこれからも守っていこうではないか」
講堂全体が静寂に包まれた。次いで、一部の学生たちが拍手を始めると、それは次第に広がり、講堂全体が拍手の音で満たされた。
エマはその場の拍手を聞きながら、フィンの言葉とルイの力強い声を思い出す。そして、胸の奥に静かだが確かな決意が芽生えているのを感じた。
「私も、この場所で自分の道を切り開いてみせる」
学長が最後の言葉で締めくくる。
「これからが本当の始まりじゃ。新たな一歩を共に踏み出そうではないか!」
その言葉に再び拍手が巻き起こり、講堂の雰囲気が明るくなった。




