22. 大切な友達
晩餐会が終わり、エマはソフィアとフィンと一緒にルミナス・カレッジへ戻ろうとしていた。しかし、ふと気づくとソフィアの姿が見当たらない。
「フィン、ソフィアがどこに行ったか知らない?」
エマは少し心配そうに尋ねた。
「さっきまで一緒にいたはずだけど……レガリア・カレッジの中をもっと見たいって言ってたし、案内してもらってるのかもしれないね」
フィンは少し呑気な口調で答える。
「でも、勝手にどこかに行くタイプじゃないと思うんだけど……」
エマの胸に不安が広がる。それでも、これ以上遅くなるわけにもいかず、フィンと二人で先にルミナス・カレッジへ戻ることにした。
帰り道、二人が石畳の小道を歩いていると、暗がりに何かが倒れているのが見えた。
「……誰かいる?」
フィンが警戒心を込めた声で言う。
エマが近づくと、その人影がソフィアだと気づき、青ざめた。
「ソフィア!? どうしたの!?」
彼女の頬に触れると冷たく、意識がない。エマは震える手でソフィアの肩を揺さぶったが反応はない。
「急いで医務室へ連れて行こう!」
フィンの力強い声に促され、二人はソフィアを抱きかかえながら魔法学校の医務室へ急いだ。
医務室では、温かい光が柔らかく灯る部屋の中で、ソフィアがベッドに横たわっていた。しばらくして、ようやく彼女のまぶたがゆっくりと開いた。
「ソフィア!」
エマは思わず彼女の手を握りしめた。
「エマ、フィン……ありがとう。私……何があったんだろう……」
ソフィアは困惑した表情を浮かべていた。
「何か覚えてる?」
フィンが優しく尋ねる。
ソフィアは少しの間、記憶を探るように目を閉じた。そしてぽつりと呟く。
「誰かに……『お前が人間か?』って聞かれたの。それから、襲われたみたいで……」
その言葉を聞いた瞬間、エマの胸が締めつけられるような思いに駆られた。
「ソフィア、ごめん!」
エマは突然、涙をこぼしながら叫んだ。
「え? エマ、何を言ってるの?」
ソフィアは驚いた顔で彼女を見つめる。
「私のせいでソフィアまで襲われるなんて……私なの。アルカナ魔法学校の人間って……」
その言葉に、部屋の空気が一瞬静まり返った。フィンも何も言えず、エマを見つめている。ソフィアは驚いたように目を見開き、しかしすぐに優しい表情に変わった。
「エマ……あなたのせいじゃないわ」
ソフィアはそっと手を伸ばし、エマの手を握り返した。
「でも、私がここにいるせいで……!」
エマは涙をこぼしながらうつむいた。
「違う。エマ、聞いて。犯人は許せないけど、それはあなたの責任じゃないわ。それに、エマがここにいることがどれだけ素晴らしいことか、私は知ってる。だから、自分を責めるのはやめて」
ソフィアの声は力強く、優しさが込められていた。
エマはその言葉に、少しずつ心がほぐれるのを感じた。泣き顔のまま顔を上げると、ソフィアの微笑みが視界に広がった。
「ありがとう、ソフィア……」
「それに、何があってもあたしはエマの味方だからね。フィンだって、そうでしょ?」
「もちろんだ!」
フィンが笑顔で答えた。
エマはその瞬間、かけがえのない友達の存在の重みを強く感じた。