表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/207

201. 焦燥

「と、時の古代魔法具が……」


 ノスヴァルドは胸元の砕け散ったネックレスを見つめ、低く呟いた。


「遊んでいるから、こうなるのよ」


 冷ややかな声が響く。少女がノスヴァルドを一瞥し、言い放った。リチャードは言葉を失ったまま立ち尽くしている。


「ルイ……古代魔法具が……」


 エマは小さく呟いた。


「古代魔法具は、すべて揃えたうえで、破壊するかどうかを決める約束だった。それに、時の古代魔法具を使ってオルケードを元に戻すはずだった……」


 ルイはわずかに表情を曇らせ、申し訳なさそうに続ける。


「エマ、ニヴェラ……本当にすまない」

「……」


 ニヴェラは沈黙したままだった。悔しいが、こうするしかなかったと理解している。


「でも、これで――」


 エマが口を開こうとしたその瞬間――


 ノスヴァルドの体から禍々しい魔力が吹き出した。


「ああ!! もう、絶対に許さない……!!」


 怒りに満ちた叫びが響く。ノスヴァルドはルイを睨みつけ、その名を呼んだ。


「憎きフェルマール家の最後の生き残り……レオン・フェルマール!!」


 ノスヴァルドは杖を振ると、宙に大きな映像が浮かび上がる。


 そこに映し出されたのは、隣の都市に滞在するアルカナ魔法学校の学生たちと教授たち、そして――ロンドンで暮らすエマの両親。


「っ……!?」


 エマとルイは、言葉を失った。


「フフフ……ハハハッ!! さあ、渡してもらおうか!! レクス・ソルヴィールを!!」


 ノスヴァルドの唇が歪む。


「渡さないなら……私の可愛い部下たちが、こいつらを皆殺しにするよ?」


 ルイは視線を落とし、焦燥の色を浮かべる。エマは、友人や家族が人質に取られているという事実に、声も出せない。


「ルイ、どうする気だ!?」


 ニヴェラが叫ぶが、ルイは何も答えなかった。


 沈黙の中――ルイは決意を固め、首元からレクス・ソルヴィールを外す。


「レクス・ソルヴィールを渡せ!! さあ!!」


 ノスヴァルドの声が響く。


 そして――


 ルイは、ノスヴァルドにレクス・ソルヴィールを投げ渡した。


「そんな……」


 リーナが小さく息を呑む。


 ノスヴァルドはレクス・ソルヴィールを手にし、高らかに叫んだ。


「レクス・ソルヴィール!! やっと私の手に!!」


 その瞬間、ノスヴァルドの首にかかったレクス・ソルヴィールが禍々しい光を放つ。


 邪悪な、闇のような輝き――


「くっ……やはり、すぐに扱うのは難しそうだねえ……」


 ノスヴァルドは不気味な笑みを浮かべ、低く呟く。


 彼の背後では、部下の少女とリチャードが静かに笑みを浮かべていた。


 エマ、ニヴェラ、リーナ、セオ――彼らは、為す術もなく、ただその光景を見つめることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ