20. 強い味方
「君、人間だよね? 入学式の日に、広場で見かけた時から気づいてたよ」
その言葉に、エマは一瞬固まったが、カイには敵意を感じられなかった。
「そっか……あの日、私が人間だとわかってたんだね」
エマは冷静になろうと努め、少し肩の力を抜いた。
「君が人間だからって、何も悪くはない。君には、この学校にいる資格がある」
「でも、私がここに来たことで、皆に迷惑をかけてるんじゃないかって思って……」
エマは小さく呟きながら、目を伏せた。
「それは違うよ。君はただ、ここで学んでいるだけ。君が自分を責める理由なんて無い」
エマはしばらく黙っていたが、カイの言葉に少しだけ心が軽くなったような気がした。しかし、心の奥には依然として不安が残っている。
「約800年前、ファルディオン家は魔法使いによる人間界の支配を止めたが、それは結果として魔法界と人間界の分断を生んだ。君が差別的な発言を受けるのは、僕たちファルディオン家の責任でもある。もし君が襲われそうになったら……」
カイは静かに言った。「必ず守ってみせる。君には、もう何も心配させない」
そう言って、カイはそのままエマに微笑みかけ、ゆっくりと足を踏み出した。
「今度僕のカレッジにも招待するよ。それじゃあ、またね」
カイは軽く手を振ってから、夜の静けさの中に消えていった。エマはその後ろ姿を見送ると、心の中に少し温かい感覚が残り、少しだけ笑みを浮かべた。