表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/207

197. 終戦

 黄金の輝きが静かに収束し、空中都市エテルは元の姿を取り戻していた。


 崩壊の危機は去ったが、その場にいた全員が、今の出来事を信じられずにいた。


 そして、誰よりも驚いていたのは——エマ自身だった。


「エマ、今の魔法はなんだ!?」


 ニヴェラが真っ先に声を上げる。

 その表情には驚きと、ほんの少しの警戒が混じっていた。


「えっと……わからない」


 エマは戸惑いながら答える。


「わからない!?」


 ニヴェラは思わず目を見開いた。


 ルイが一歩前に出る。彼の蒼い瞳が、冷静にエマを見つめた。


「エマ、未来で知った魔法か?」


 未来——


 エマは、一度目を閉じ、未来で見てきた出来事を必死に思い出す。


 だが——


(そんな魔法、未来でも見たことない……)


 「未来の自分が知ってた呪文なのかな……わからないけど、咄嗟に思いついたの」


 言葉にしながらも、自分でも信じられなかった。

 呪文は、魔法の理論に基づいて学ぶもの。

 突発的に発動できるものではない。


 それなのに、今の魔法は——


 まるで、自分の中にずっと眠っていた何かが、勝手に目を覚ましたようだった。


「まさか、無意識に未来の魔法を……?」


 ニヴェラが息をのむ。


 その時——


「お前……今の魔法は一体……?」


 重い足音とともに、反乱軍のリーダーが現れた。

 肩を押さえながらも、まっすぐエマを見据えている。


 その視線には、困惑と、確かな畏怖があった。


「……!」


 エマが言葉を探していると、さらに別の声が響いた。


「エマ……今の、あなたの魔法?」


 振り向くと、リーナも駆け寄ってきていた。

 風に乱れた髪を押さえながら、真剣な眼差しを向けてくる。


「リーナ……」


 リーナもまた、何かに気づいているようだった。


 ——エマは、自分の中で目覚めた未知の力に、今さらながら恐怖を覚え始めていた。


 その時、突如、風を切る音とともに誰かが瞬間移動で現れた——アルカナ魔法学校の学長だった。


「だれだ!?」


 ニヴェラが素早く身構える。


 しかし、学長は穏やかに微笑み、ゆっくりと口を開いた。


「さて、戦いは終わったようじゃな」


 その言葉とともに、視線を反乱軍のリーダー——セオへと向ける。


「反乱軍のリーダー……セオよ。どうやら、おぬしらの勝ちのようじゃ」


 倒れた魔法連盟の幹部たちが、周囲に散らばっている。


 学長は周囲を見渡しながら、静かに杖を掲げた。


「ワシは怪我人の治療を始めるとしようかのう」

「手伝います」


 ルイが即座に申し出る。


 だが——。


 エマは、じっと学長を見つめていた。


(……何かが違う)


 見た目も声も、いつもと同じ。

 振る舞いにも不審な点はない。


 けれど、エマの胸に、得体の知れない違和感が広がっていく。


 まるで——目の前にいる人物が、本当に学長なのか確信が持てないような感覚。


「エマ?」


 ルイが訝しげにこちらを見た。


「どうした?」


 エマは一瞬、言葉を飲み込んだ。


 この違和感の正体を説明することはできない。

 けれど、無視することもできなかった。


「……なんでもない」


 そう答えながらも、エマの中で疑念が膨らんでいく。


(——本当に、この人は学長なの……?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ