193. 交差する古代魔法具
瓦礫の中から、リチャードがゆっくりと立ち上がる。
ボロボロになった服の端が焼け焦げ、顔には無数の傷が走っていた。
しかし、その瞳には決して消えない闘志が宿っている。
反乱軍のリーダーが驚愕の表情を浮かべる。
「……まだ立てるのか?」
彼は光の古代魔法具を使い、圧倒的な力を振るってきた。
本来ならば、リチャードのような魔法使いが抗えるはずもない。
「……バカな」
反乱軍のリーダーは呆れたように呟くと、杖を振るった。
瞬時に、光の刃が鋭く放たれる。
しかし、リチャードは僅かな動きでその攻撃を避けた。
「……ッ!」
次の瞬間、リチャードは杖を一閃し、強烈な風の刃を生み出す。
反乱軍のリーダーが瞬時に光の盾を展開し防ぐものの、その衝撃で後退する。
「そういうことか……」
その戦いを見ていたルイは険しい表情をしていた。
「ルイ、大丈夫?」
エマはルイの様子に気づき、思わず声をかける。
ルイはじっとリチャードの動きを見つめながら、低く答えた。
「……もう一つの古代魔法具だ」
「え?」
エマはルイの言葉が理解できず、戸惑う。
「リチャードが持っているようだ。周りに気づかれないように、ほんのわずかに古代魔法具の力を使っている」
「魔法連盟も古代魔法具を持っていたってこと……!?」
「持っていてもおかしくはない」
ルイの声には確信があった。
エマの頭の中に疑問が渦巻く。
魔法連盟が古代魔法具を秘匿していたことにも驚きだったが、それをリチャードが持っていたという事実が衝撃だった。
「リチャードは、何の古代魔法具を……?」
エマが問いかけると、ルイの視線が鋭く光る。
「緑の古代魔法具だ」
「えっ……!?」
エマは息を呑む。
緑の古代魔法具――エルドラの迷宮森でエマたちが手に入れられなかった古代魔法具だ。
ルイの険しい表情を見て、その力が尋常なものではないことは察せられる。
リチャードは杖を強く握りしめる。
彼の周囲に、緑色の光がわずかに揺らめいた。
「……光の古代魔法具は、魔法連盟がもらう」
リチャードの声は静かだったが、その言葉には揺るぎない決意が宿っていた。
光と緑の古代魔法具が交差する戦いが、今まさに始まろうとしていた。