191. リーダー
「光の古代魔法具だ」
ルイが冷徹な声で呟く。その声には警戒心と共に、隠しきれないほどの緊張が滲んでいた。
「まさか、闇の魔法使いが……!?」
エマは目を見開き、驚きの声を上げる。その顔に浮かぶのは恐怖と疑念が入り混じった表情だ。
「まだわからない。行ってみよう」
ルイは冷静に答える。その瞳には何も表さないが、何かを察しているような雰囲気が漂っていた。エマとニヴェラは視線を交わし、無言で頷く。
クロに乗ったまま、三人はすぐに光が放たれた方向へと飛び立つ。
ルイがかけている透明魔法の効果で、三人の姿は周囲に見えない。クロの魔力の微かな波動が漏れているが、目立つことなく静かに進んでいく。
突然、目の前で光の古代魔法具を使って放たれた光の攻撃魔法が魔法連盟本部に向かって襲いかかるのが見えた。
凄まじい光が一瞬にして放たれ、空気を引き裂くような轟音が響く。エマはその衝撃に目を見開き、クロの背中で身を震わせる。
「光の古代魔法具……」
エマが震える声で呟くが、ルイは一切反応しない。冷静にその光景を見つめているだけだ。
魔法連盟本部の精鋭たちが必死に防御魔法を展開するが、光の力にバリアはあっさりと打ち破られ、建物が破壊され始める。その様子を遠くから眺めるルイたち。
エマの胸に重い感情がこみ上げるが、ルイは無言でただその場を見守っている。
「どうする?」
エマが尋ねると、ルイは一瞬だけ彼女を見た後、再び前を見つめて答える。
「見守るだけだ」
その言葉に、エマは戸惑いを隠せなかった。ルイが魔法連盟を守るつもりなど、まったくないことを再認識する。
ただ、目の前で繰り広げられる戦闘の結末を見届けるだけ。
その時、魔法連盟本部の上空に、アレクサンドラ・ヴァレンス、リチャード・エルモンド、セリア・ノヴァーク、エドモンド・グリーンリーフ、カタリーナ・ヴェルディナが現れた。
「反乱軍のリーダーが、光の古代魔法具を持っているなんて……!」
魔法連盟トップのアレクサンドラが驚きの声をあげる。その声は明らかに動揺していた。
「全員で奪い取りましょう」
セリアが冷静に呟くと、魔法連盟の精鋭部隊であるガーディアンズの数名がすぐにその場に集まり始める。
「魔法連盟による支配はこれで終わりだ!」
反乱軍のリーダーが叫び、次の攻撃魔法を詠唱しようとする――。