188. 加勢
夜――。
宿の部屋で、ルイとエマは二人きりで横になっていた。
眠りにつく前、クロは既に足元で丸くなり、静かに眠っている。
「ねえ、ルイ」
「どうした?」
エマは未来での出来事を思い出し、ルイに尋ねる。
「未来って、変わったりするのかな?」
ルイはしばらくエマの顔を見つめた後、静かに答える。
「……嫌な未来だったのか?」
「そういうわけじゃないけど……どうなんだろうって」
「未来は……選べる」
「選べる?」
「エマの見た未来がそのまま実現する可能性は高い。でも、それでもエマの未来は、エマ次第でどうにでもなる」
「……そっか」
「なんか嬉しそうだな」
「べ、別に! 寝るね、おやすみ」
「おやすみ」
二人は静かに、そして深い眠りについた。
翌朝――。
ルイは一人早朝に目覚め、宿を出て町外れの高台へと向かった。
高台に到着すると、そこに立っていた人物に声を掛ける。
「お久しぶりです、学長」
学長は振り返り、にっこりと微笑んだ。
「良い朝だな、ルイくん」
「はい、そうですね」
「エテルへ行くのか?」
「はい。学長もですか?」
「いや、ワシはしばらくユザリアにいる予定じゃ。課外学習だからのう」
「学長、わざわざここに?」
「うむ。実は、魔法連盟からの要請で、ワシや一部の教授たちにエテルへ来るよう言われたんじゃ。反乱軍の襲撃に備えてな。アルカナ魔法学校の卒業生で、魔法連盟に就職している者は多いからのう」
ルイは静かに話を聞きながら、眉をひそめた。
「しかし、魔法連盟には加勢しない。ワシや教授たちは、あくまで怪我人の治療に専念するつもりじゃ。戦いが終わり次第、すぐに対応できるよう、ユザリアで待機する。魔法連盟にもそう伝えてある」
「それで、学生たちも全員連れて来たのですか?」
「教授たちを連れてくる必要があったからな」
「そうですか」
学長は少し間を置いて、ルイをじっと見つめた。
「ルイくん、エテルでの戦い……くれぐれも気をつけるんじゃよ。闇の魔法使いが絡んでいる可能性も高い」
「それは……どういう意味ですか?」
「魔法連盟の最近の動き、ワシも看過できん。もしかすると……」
「学長、残念ですが、アルカナ魔法学校も――」
「わかっておる」
その言葉が、ルイの心に重く響いた。闇の魔法使いたちが動き出した今、どんな未来が待っているのか、誰にも分からない。