187. 課外学習
ルイたちは、ゴンちゃんの背に乗りながら旅を続けていた。途中の街で宿を取り、休憩を挟みながら進んでいく。
そしてしばらくして、空中都市エテルの近くにある大都市ユザリアへとたどり着いた。
「一度ここで降りよう」
ルイがそう言うと、ゴンちゃんはユザリアの入り口付近へと舞い降りる。
「ゴンちゃん、ここまで送ってくれて本当にありがとう」
エマはゴンちゃんを優しく撫で、お別れを言った。
「行くぞ」
ルイの一声で、一行はユザリアの街へと足を踏み入れる。
「急いでエテルへ向かわなくていいのか? もうすぐそこだろう」
ニヴェラが訝しげに問いかける。
「今はいい。それより宿を探そう」
ルイは静かに答え、三人は歩き出した。
宿を見つけ、一息ついた後、ルイはニヴェラに向かって言う。
「ニヴェラはユザリアで待っていてくれ」
「……私も一緒に行くつもりだったが?」
ニヴェラは不満げに眉をひそめる。
「お前は反乱軍とも無関係だ。それに――」
「それに?」
「この戦いが終わったら、すぐにオルケードの人々に会いに行きたいだろう? ここで準備をしておいてくれ」
「……断る」
ニヴェラはルイを真っ直ぐ見つめる。
「エマが行くなら、私も行く。何かあれば、私がエマを守る」
ルイは短く息を吐き、肩をすくめた。
「……仕方ない。わかった」
「じゃあ今日は休んで、明日エテルの様子を見に行こう」
ルイの言葉に、二人は頷いた。
しばらくして、三人とクロは夕食をとるため街へ繰り出した。
繁華街の明かりの下を歩いていると、エマはふと聞き覚えのある声を耳にする。
「……ソフィア? フィン!?」
驚いて振り向くと、そこにはアルカナ魔法学校の同級生、ソフィアとフィンの姿があった。
「エマ!?」
二人も同じように驚き、駆け寄ってくる。
「どうしてここにいるの!?」
エマが思わず尋ねると、フィンが得意げに答えた。
「アルカナ魔法学校の課外学習で来てるんだ。先生たちも一緒だよ!」
「え、じゃあ、みんなも?」
「うん、基本的に全員来てるよ!」
ソフィアが笑顔で言う。
「エマは忙しい? せっかく会えたし、明日どこか一緒に行かない?」
「ごめん、明日も色々あって……」
「そっか。でもまた学校には戻ってくるよな?」
フィンが少し寂しそうに尋ねる。
「もちろん!」
エマは微笑み、二人と別れた。
「……学長も来てるな」
別れ際、ルイが低く呟いた。
「魔力を感じるの?」
「ああ」
険しい表情を浮かべるルイに、ニヴェラが首を傾げる。
「どうした?」
「アルカナ魔法学校がこんな遠方まで課外学習に来るのは、少し妙だ」
「確かに……学校からかなり遠いもんね」
エマもルイの言葉に同意する。
何かが起こる――そんな予感が、三人の胸に広がっていた。