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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
183/207

183. 二人きり

 気づくと、エマはルイとともにどこかの部屋にワープしていた。


 シンプルながらも威厳を感じさせる部屋。壁には重厚な装飾が施され、空気にはどこか張り詰めた緊張感が漂っている。


「ここは……?」

「知らないほうがいい」

「……わかった」

「少しここで待っていてくれ」

「うん。……あ、そういえば、私のソルヴィールは?」

「必要ない」

「無いの……?」

「ロンドンの家に置いてある。心配するな」

「そっか……」


 ルイは一瞬躊躇った後、低い声で付け加えた。


「エマのソルヴィールは、あれから色が変わっている。見ないほうがいい」

「え……」

「気にするな」

「そんなこと言われたら余計に気になるよ……」

「すぐ戻る」


 そう言い残し、ルイは部屋を後にした。


 エマは一人、静まり返った部屋でため息をつく。


「うーん……窓の外も見ないほうがいいのかな?」


 ぼそっと呟くが、誰からの返事もない。


 ルイの言葉が頭の中で繰り返される。


(私のソルヴィールの色が変わった……何か才能に目覚めたってこと? それに――ルイが服の下に隠しているソルヴィール。あれはレクス・ソルヴィールなのかな?)


 知りたい。


 でも、知ってはいけない。


 未来を変えてしまうかもしれないから。


 エマはじっと座り、ルイの帰りを待つことにした。


 少ししてから、エマのいる部屋の扉がノックされた。


「ルイ?」


 エマがそう言いながら扉を開けると、そこには見知らぬ男性が立っていた。


「エマさん?」


 男性は穏やかな笑顔を浮かべ、親しげに話しかけてくる。


「ルイさんと一緒にロンドンへ行ってませんでしたっけ?」


(この人、誰……? でも、私の名前を知ってるし、ルイとも関係があるみたい……)


 警戒しつつも、エマは笑顔を作って答えた。


「ちょっと用事があって」

「そうなんですね。あ、そうだ! ちょっとお願いしたいことがあるんですけど、少しだけ付き合ってもらえませんか?」

「ごめんなさい、今ルイを待たないといけないので――」

「すぐ終わるんで、大丈夫ですよ!」


 男性は強引に言葉を重ね、一歩踏み出してくる。


「でも――」


 エマが断ろうとしたその瞬間、彼はぐいっとエマの腕を引いた。


「えっ――」


(力が強い……!)


 突然の行動に、エマの心臓が跳ねる。


 広い廊下へと引きずられながら、エマは初めてこの建物がただならぬ威厳を持つ場所だと気づいた。


(こんな場所だったんだ……でも、それよりも――)


「ごめんなさい! やっぱり部屋に戻ります!」


 エマは咄嗟に男性の手を振り払うと、急いで部屋へと引き返そうとした。


「そうですか……残念だなぁ。せっかく二人きりになれたのに」


 その言葉に、エマの背筋がぞくりと凍る。


(何なのこの人……)


「……では、また」


 不自然な笑顔を浮かべながら、エマは扉に手をかける。


 しかし――。


「テネブラエ・ソポリス!」


 不意に背後から呪文の詠唱が響いた。


 次の瞬間、眩い光が視界を覆い尽くす。


 エマの意識は、深い闇へと沈んでいった――。

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