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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
178/207

178. 待つ

 ルイは怒りを込めた眼差しを放ち、その瞳から放たれる冷徹な魔力が周囲を震わせた。


 空気が重く圧し掛かり、地面が微かにひび割れる音が響く。彼の怒りと魔力が交じり合い、空間そのものが揺れる感覚に包まれる。


「伏せろ!」


 ルイの言葉が、まるで雷鳴のように響く。ニヴェラはその衝撃に一瞬戸惑うが、すぐに命令を理解し、身を低くした。


 ルイは一瞬も躊躇うことなく、両手を天にかざした。その動作と共に、空気が引き裂かれるような音が響き、時間さえも歪むほどの魔力が解き放たれる。


「——オルデス・インフェリウム!」


 呪文が発せられると、圧倒的なエネルギーが空間を引き裂き、影の分身たちが次々と消し飛んだ。無数の闇の魔力が一瞬で粉砕され、その破壊力は想像を超えていた。


 ノスヴァルドの部下である少女は、暴風のような衝撃に巻き込まれ、まるで風に吹き飛ばされたかのように宙に舞った。


 空中で一瞬停止した後、その身体は無慈悲に地面に叩きつけられた。


 少女の体は、ルイの魔法によって致命的な傷を負い、地面に倒れ込む。その目には未だに、不敵な光が宿っていた。


「……っ、くっ……!」


 彼女の唇から血が滴り落ちる。


 痛みに耐えながら、少女は必死に息をひき、闇の中へと消えようとする。最後の力を振り絞って、赤い光が闇を裂く中、彼女の姿がふっと消えた。


「——終わった」


 その言葉と共に、ようやく静けさが戻り始めた。


 戦いの余波が薄れると同時に、霧が再び濃く立ち込め、遺跡を包み込んでいった。闇の魔力が消え、周囲に広がるのは、以前と変わらぬ冷たく湿った霧だけだった。


 ルイはその場に立ち尽くし、荒い息を吐きながらも警戒の目を光らせていた。まだ油断はできない。だが、少なくともこの瞬間、あの少女の姿は消えたのだ。


「エマは……!?」


 慌てた様子でニヴェラがルイに問う。


「戻ってくるのを待とう」


 ルイが冷静に答える。


「本当に戻ってこれるのか!?」

「わからない。しばらく待って戻ってこなければ、俺がなんとかする」

「なんとかって……」

「とにかく今は待つんだ」

「っ……!」


 霧が深まる中、戦いの余韻が消え去り、再び静寂が支配する遺跡の中で、エマが無事に戻ることを祈りながら、彼らはその場で待ち続けた。

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