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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
177/207

177. 時の狭間

 エマの光の魔法が少女の体を包み込み、影の魔力をかき消していく。しかし、少女は口元を歪めながら、かすかに笑った。


「——いいわ。その光……もっと近くで感じてあげる」


 次の瞬間、少女の影が地面に滲むように広がり、黒い霧のようなものが立ち上る。エマは息をのんだ。


「影の分身……!?」


 霧の中から、少女の姿が幾つも現れる。まるで無数の影が彼女の姿を映し出しているようだった。


「さあ、どれが本物かしら?」


 同時に四方から魔力の波動が押し寄せる。


 エマは杖を強く握りしめた。どれが本物かわからない。だが、目の前の敵は、確かに強大な力を持っている。


 影の少女たちが一斉に動き出した。


「エマ、避けろ!」


 ルイはすでに周囲を囲まれ、四方から襲いかかる影と交戦している。瞬時に繰り出される光と闇の魔法がぶつかり合い、空間が軋む。


 一方、ニヴェラとクロもまた複数の影に翻弄されていた。ニヴェラは風の刃を放ちながら、すばやく距離を取ろうとするも、影の一体が彼女の背後を取る。


「くっ……!」


 ニヴェラが風の壁を展開するが、闇の魔力に浸食され、次々と崩されていく。


 そして——


 エマの前に一体の少女が瞬間移動するように現れた。そして、闇の魔法が発動するよりも早く——


「——ルミナ・シールド!」


 エマの前に黄金の防御壁が広がる。少女の魔法が防壁に弾かれ、空中で爆ぜる。しかし、攻撃は止まらない。


「……逃がさない」


 いつの間にか、もう一体の影がエマの背後に現れていた。


(しまった!)


 エマが気づいたときにはすでに遅かった。


「——テンブラ・レクイエム」


 闇を裂く囁きとともに、黒い奔流が背後から襲いかかる。ぞわりと肌を刺す魔力の波動——次の瞬間、闇の衝撃がエマの背中を貫いた。


「——っ!」


 強烈な力に全身が弾かれ、彼女の視界が激しく揺れる。重力が消えたように体が宙を舞い、無防備なまま、開かれた門へと吸い込まれていく。


「エマ!!」


 ルイとニヴェラの叫びが響くが、その声は、もう届かない。


 漆黒の闇がエマの視界を覆い尽くす。そこは、底なしの深淵。触れると、どこかの時代へと飛ばされてしまう時の狭間だった——。

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