174. 遺跡の守護者
遺跡の守護者は攻撃を止めない。次々と魔力を放ち、そのたびに大気が震えた。
「……私もやるしかないか」
ニヴェラが静かに呟き、胸元のペンダントに手を当てる。
「オルタ・エス、マギストラ・エテルニタティス!」
ニヴェラの背後に光が集まり、巨大な女神の姿をした精霊が現れる。その威厳に満ちた姿が、遺跡の霧の中に浮かび上がった。
「ニヴェラの精霊……!」
エマが驚きの声を漏らす中、ニヴェラはさらに詠唱を続ける。
「イーラ・ディヴィナ、フルミナ・ケーレスティア!」
女神の精霊が手をかざすと、眩い光が巨大な槍となり、守護者へと放たれる。
槍は一直線に飛び、守護者の胸に突き刺さった。轟音が響き、ひび割れが全身へと広がっていく。
だが、守護者はまだ倒れない。
「くっ……まだ足りない……!」
ニヴェラがさらに詠唱を続けようとした瞬間、守護者の反撃が襲いかかる。
「危ない!」
ルイが素早く動き、バリアを展開。轟音とともに激しい魔力の奔流が弾かれ、周囲の霧が吹き飛んだ。
守護者はゆっくりと片腕を持ち上げ、拳を振り下ろす。
「このままじゃ押し切られる……!」
ニヴェラは精霊を操り、再び攻撃を仕掛ける。
「ルーメン・ジャスティティア!」
女神の精霊が天空に手をかざすと、無数の光の矢が現れ、守護者を貫いていく。しかし、それでも守護者の動きは止まらない。
「まだ……動くのか……!」
守護者の拳がニヴェラの精霊を直撃し、女神の姿がかき消えかける。
「……っ!」
ニヴェラが膝をつきかけたその時——
「任せろ」
ルイが前に出る。
「今だ、ルイ!」
ニヴェラの叫びに応えるように、ルイは杖を振り上げた。
「終わらせる——イグニス・マギカ!」
青白い魔力が奔流となり、守護者を包み込む。強烈な光とともに、巨人の身体が崩れ去った。
静寂が訪れる。
霧の向こうに、いつの間にか門が現れていた。
「やった……?」
エマが息を整えながら門を見つめる。
ルイは頷き、静かに杖を下ろした。
「いくぞ」