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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
173/207

173. 遺跡の奥

 遺跡の奥へと足を踏み入れると、霧がさらに濃くなり、視界が次第に奪われていった。


 風は止み、静寂が支配する。耳を澄ませば、自分たちの足音だけが響いていた。まるで時間そのものが、この場所では止まっているかのようだった。


 エマは肩をすくめながら、ルイの後ろを慎重に歩く。


「……なんだか、息苦しいね」


 呟くように言うと、ニヴェラが小さく頷く。


「時間の歪みが影響しているのかもな」


 ルイは警戒を滲ませながら前方を見つめた。


「危険だが……遺跡の最奥まで進んでみよう」


 その瞬間、遺跡の奥から不気味な音が響いた。


 ゴゴゴ……。


 地鳴りのような振動が足元に伝わり、霧の向こうにぼんやりとした影が浮かび上がる。


「何か来る……!」


 エマが反射的に身構えると、ルイが冷静に杖を構えた。


「どうやら歓迎されていないようだな」


 ゆっくりと霧の中から現れたのは、巨大な影。石のような体を持ち、まるで遺跡そのものが形を成したかのような巨人だった。


「あれは……!」


 ニヴェラが低く呟く。


 その姿は威圧的だった。ひび割れた石の体に刻まれた無数の古代文字。目の部分には青白い光が宿り、不気味に揺らめいている。


「……遺跡の守護者、か」


 ルイが抑えた声で呟く。


 ゴゴゴゴ……!


 守護者が一歩踏み出すたび、大地が揺れ、重圧が周囲の空気を歪める。


 エマは思わず後ずさった。


「おいおい、こんなのと戦うのか?」


 ニヴェラが苦笑まじりに言うと、ルイは冷静に答える。


「部外者は排除するというわけか」


 その言葉を証明するように、守護者がゆっくりと手を上げた。ひび割れた掌に、淡く輝く魔法陣が浮かび上がる。


 次の瞬間——。


「来るぞ!」


 ルイの声が響いた。


 守護者が放った魔力の奔流が、一気に彼らを襲う。


 轟音とともに大気が震えた。だが、その瞬間にはすでにルイの杖が動いていた。


 彼の前に展開されたバリアが、魔力の奔流を完璧に防ぎきる。


 エマは目を見開いた。


「す、すごい……!」


 ルイのバリアは微動だにせず、まるで時間そのものを凍らせたかのような静けさをまとっていた。


 だが——。


 守護者は攻撃を止めない。


 次々と魔力を放ち、そのたびに空気が重くなる。


 エマは息を呑んだ。


 果たして、この戦いを切り抜けることができるのか——。

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