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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
171/207

171. 移動

 空はすっかり青く澄み渡り、頭上には太陽が高く昇っていた。雲の上の国オルケードは静まり返り、風がわずかに流れる音だけが響いている。


 ルイとニヴェラは、崩れかけた雲の道の上に立ち、次の目的地について話し合っていた。


「ニヴェラ、時の古代魔法具を必ず見つけられる保証はない。それでも危険な旅になる」


 ルイは腕を組み、冷静に言う。


「わかってるさ」


 ニヴェラは短く答えたが、その表情には迷いがなかった。


「ならいいが……俺も目的地にたどり着くまでの間に、あまり魔力を消費したくない。一度、近くの街へ降りてから行き方を考えよう」

「わかった――」


 ニヴェラがそう答えた、その瞬間だった。


 突然、空が影に覆われた。巨大な影がゆっくりとオルケードの空を横切り、雲の切れ間から姿を現す。


「……ドラゴン?」


 ニヴェラが目を細め、すぐに戦闘態勢を取る。


「こんなときに……!」


 ニヴェラは低くつぶやき、風の魔力を指先に集中させた。しかし――。


「ニヴェラ、待て!」


 ルイの鋭い声が響く。


「早く仕留めるべきだ!」


 ニヴェラが反論するが、次の瞬間、ドラゴンがゆっくりと降下し、まっすぐエマの方へと近寄っていった。


「エマ!」


 ニヴェラは思わず叫ぶ。だが、エマは逃げるどころか、悠々と手を伸ばし、ドラゴンの大きな頭を撫でていた。


「!?」


 ニヴェラの目が驚愕に見開かれる。


「ニヴェラ、ごめん、この子は私の友達なの!」


 エマは無邪気に笑いながら言う。


「嘘だろ……!?」

「ゴンちゃんって言うの! ニヴェラの風魔法ほどじゃないけど、かなりのスピードで移動できるから、一応呼んでおいたの!」


 ニヴェラはしばらく言葉を失ったまま、エマとドラゴンを交互に見つめていた。


「エマ、ありがとう。助かる」


 ルイがエマに向かって微笑む。


「エマはドラゴンも手懐けられるのか?」


 ニヴェラがルイに尋ねると、ルイは肩をすくめた。


「ああ。なかなか珍しい才能だろ?」

「……」


 ニヴェラは納得しきれない表情を浮かべつつも、最後には肩を落とし、深く息を吐いた。


「まあ、このままドラゴンに乗って移動を開始しよう」


 ルイがそう提案すると、ニヴェラも観念したように頷く。


「わかった」


 こうして、一行は時の古代魔法具を目指し、ゴンちゃんの背に乗り、空へと舞い上がった。

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