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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
170/207

170. 時

 瓦礫と化したオルケードの街を、ルイ、エマ、ニヴェラ、クロは慎重に歩いていた。


 かつて整然と並んでいたはずの道は、いまや崩れた建物の残骸に埋もれ、足場の悪い廃墟と化している。


 エマは足元を確認しながら進んでいたが、突然、足場が崩れた。


「――きゃっ!」


 バランスを崩し、エマの体が雲の縁へと傾く。


「エマ!」


 ルイがすぐさま腕を伸ばし、彼女の手首を掴んだ。


 ルイは冷静にエマを引き上げると、少しだけ眉をひそめた。


「気をつけろ。このあたりはもう、まともな地盤じゃない」

「う、うん……ありがとう、ルイ」


 エマはまだ少し息を乱しながらも、安堵の表情を浮かべた。


 その間にも、ニヴェラは険しい表情のまま、辺りを見渡していた。


「誰もいないようだな」


 ルイが静かに呟く。


「闇の魔法使いに襲われて、皆逃げたのかな?」


 エマがそう言うと、ニヴェラは唇を噛みしめた。


「……国の者たちはどこかに避難しているに違いない。簡単にられるような民ではない」


 エマは、崩壊した建物を見渡しながら、ふと思い至った。


「ルイ……魔法で直せないの?」


 ルイは一瞬考え込んだあと、ゆっくりと首を振る。


「これだけ崩壊していては、さすがに難しい。修復魔法にも限界がある」


 ニヴェラがルイを見据え、鋭く尋ねた。


「……時の古代魔法具があれば、直せるのか?」


 ルイはその問いに、すぐには答えなかった。


 微かに視線を逸らし、答えを探るように沈黙する。


「それは……」

「直せるんだな?」


 ニヴェラの声には、強い確信があった。


 ルイはわずかに眉を寄せたが、やがて短く頷く。


「ああ」


 その答えを聞いた途端、ニヴェラの表情が決まったものに変わった。


「ならば、時の古代魔法具を目指そう」


 ニヴェラの声には、迷いがなかった。


 だが、ルイはすぐに応じなかった。


「……」


 ルイは小さく息をつき、思案するように視線を伏せる。


「ルイ?」


 エマが戸惑ったように問いかける。


 ルイは目を閉じ、静かに言った。


「時の古代魔法具と魂の古代魔法具は、特別危険なものだ。できれば最後の目的地にしたかった」

「そんな悠長なことを言っている場合じゃない!」


 ニヴェラの声が、冷たくも強い焦燥を帯びる。


「それに……俺たちはもうすぐ、空中都市エテルに行かなければならない。反乱軍からじきに連絡がくる」

「……!」


 ニヴェラは歯を食いしばった。


 しかし、ニヴェラはすぐにルイの前に立ち、まっすぐに見つめる。


「頼む、ルイ……時の古代魔法具を探しに行こう。オルケードを……私の国を、元に戻したいんだ」


 ルイは、ニヴェラの揺るぎない瞳を見つめ返した。


 その後、ルイは長く息を吐き、ゆっくりと頷いた。


「……わかった」


 ニヴェラの表情に、一瞬だけ安堵が浮かぶ。


 しかし、ルイは最後にきっぱりと言った。


「だが、途中で反乱軍に呼ばれたら、悪いが時の古代魔法具は後回しだ。いいな?」


 ニヴェラは一瞬口を開きかけたが、ルイの真剣な眼差しを見て、ゆっくりと頷いた。


 こうして、彼らは新たな目的地を定めた。


 時の古代魔法具を探すために――。

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