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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第一章 アルカナ魔法学校
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17. 初めての授業

 翌朝、エマはソフィアと一緒に、アルカナ魔法学校の最初の授業へ向かっていた。学内には、色とりどりのローブを身にまとった学生たちが行き交ってる。


 エマたち一年生が魔法生物学の授業を受けるのは、アルカナ魔法学校の南東に広がる学内の林だった。古びた石畳の小道を進むと、林の奥で教授が待っていた。背の高い教授は白い髭を撫でながら、厳かな声で授業を始めた。


「今日は野生の魔法生物を手懐ける基礎を学びます。対象となるのはクローキャットと呼ばれる生物。見た目は猫に近いが、怒らせるとその姿を数倍に膨らませ、脅威となる。慎重に扱うように」


 周囲を見渡すと、数匹の黒い猫のような生物が近くに集まっていた。金色の瞳がぎらりと光り、学生たちを警戒するように見つめている。エマはその鋭い視線に少しだけ怯えたが、好奇心がそれを上回った。


 「クローキャットを手懐けるための呪文はこれです」教授がゆっくりとした口調で呪文を唱えた。「『カレンディア・セリス』。言葉だけでなく、心を落ち着け、相手を受け入れる意志が重要です」


 学生たちは一人ずつ順番にクローキャットに近づき、呪文を試みた。しかし、ほとんどの猫は不満げに低く唸り、距離を取った。


 次の番はカイだった。彼は冷静に猫に向かい、堂々と呪文を唱えた。猫は一瞬身を強ばらせたが、やがて警戒を解き、カイの足元にすり寄った。


 「さすがカイ様!」周囲の学生たちが感嘆の声を上げる。


 そして、エマの番が来た。エマはクローキャットに目を合わせながら、そっとしゃがみ込んだ。教授の教えた呪文を唱えようとしたが、なぜか言葉が出てこない。代わりに、エマは自然と手を伸ばした。


「大丈夫、怖がらなくていいの」


 エマの優しい声と柔らかな微笑みが猫に伝わったのか、クローキャットは驚いたようにエマをじっと見つめた。


 次の瞬間、猫はふっと目を細め、エマの手に頬をすり寄せた。


「呪文無し……!?」


 周囲の学生たちは驚きの声を上げた。


 授業の終わり際、教授は学生たちを大きな建物に案内した。そこは魔法生物の飼育施設であり、さまざまな魔法生物が安全に管理されていた。学生たちは歓声を上げながら中を見て回る。


 施設の奥には、飼育員らしき年老いた男性が立っていた。ぼろぼろの帽子をかぶり、どこか飄々とした雰囲気を漂わせている。


「そのクローキャット、魔法を使わずに手懐けたのかい?」


 おじいさんはエマに微笑みかけながら近づいてきた。


 突然、全身が炎で覆われた鳥のような生物が、おじいさんの帽子に飛び乗った。帽子が勢いよく燃え始める。


「も、燃えてます!」


 エマが慌てて声を上げた。


「おお、いかんいかん」


 おじいさんは落ち着いた様子で杖を取り出し、帽子に向けた。炎は瞬く間に消え、帽子は元通りになった。鳥は喜んだように鳴き、おじいさんの頭の上をくるくると飛び回った。


 「この子はワシのペットなんじゃが、どうにも火遊びが好きでねえ」おじいさんは苦笑した。


「それにしても、君には不思議な才能があるようだね」


 おじいさんの言葉に、エマは照れくさそうに笑ったが、どこか不思議な温かさを感じた。

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