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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第八章 クロノス・アビス
169/207

169. 瓦礫

 翌朝、宿を発ったルイたちは、街の外れまで歩いてから足を止めた。


「ニヴェラ、オルケードの位置は?」


 ルイが尋ねると、ニヴェラは少しの間沈黙したあと、遠くを見つめながら静かに口を開いた。


「南西の方角……ここからだと相当距離がある。正確な位置は……」

「大丈夫だ。おおよその方角さえわかればいい」


 ルイがそう言うと、ニヴェラは心配そうにルイを見た。


「しかし、ルイ……お前でも、一度にそんな距離を跳ぶのは……魔力の消耗が激しすぎる」


 ニヴェラの声には、冷静を装いながらも滲む焦りがあった。


 しかし、ルイは落ち着いた様子で軽く肩をすくめる。


「なんとかなる。俺を誰だと思ってる」

「……お前は確かに強い。しかし——」

「行くぞ」


 ルイの言葉を合図に、強烈な魔力の波動が広がった。


 次の瞬間――。


 ルイ、エマ、ニヴェラ、そしてクロは、遥か高空、雲の上にいた。


 エマの体がふわりと浮く。だが、それはルイが彼女を支えていたからだ。


 眼下には、結界の失われたオルケードの無残な姿が広がっていた。


 エマは息をのむ。


「そんな……」


 かつて訪れた、あの美しく整った国の面影は、どこにもなかった。


 建物は崩れ、街の中心部は瓦礫の山と化している。地面には無数の裂け目が走り、黒く焼け焦げた跡がいくつも残っていた。


 まるで巨大な嵐がすべてを薙ぎ払ったように、街の形すら歪んで見えた。


 ゴウッ!


 突風が巻き起こった。


 エマが驚いて顔を上げると、ニヴェラがすでに真っ直ぐ街へと急降下していた。


「ニヴェラ!」


 ルイが短く呼びかけるも、ニヴェラは止まらない。


 彼女の背から広がる光の翼が強く輝き、風を切る音とともに、一瞬で地上へと消えていった。


 その姿に、エマは思わずルイの服を掴んだ。


「行こう、ルイ!」

「任せろ」


 ルイが軽く頷くと、彼の魔力がふわりとエマの体を包んだ。


 ルイはそのままエマを抱え、クロとともに急降下を開始する。


 地上へ近づくにつれ、破壊された街の惨状がよりはっきりと見えてきた。


 そして——崩れた建物の間で、砂煙の中に立ち尽くすニヴェラの姿が目に入る。


 彼女は無言で、目の前の光景を睨みつけていた。


 その拳は白くなるほどに握りしめられている。


「ニヴェラ……」


 ルイが静かに呼ぶと、彼女は微かに肩を揺らした。

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