表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/207

161. 新時代

 レオノーラとフィオナが去り、部屋にはエマとルイだけが残った。


 窓の外には、デア・ラキーナの街並みが静かに広がっている。だが、平穏な風景とは裏腹に、これから起こることは穏やかではなかった。


「エマ、起きたばかりで悪いが話がある」


 ルイが真剣な表情で切り出す。


「どうしたの?」


 エマはベッドの上で体を起こし、ルイの顔を見つめた。


「リーナから連絡があった」

「リーナから?」


 彼女の名前が出た瞬間、エマの中に警戒心が走る。


 リーナがわざわざルイに連絡を入れてくるということは、それが緊急性の高い知らせである証拠だ。


「ああ。反乱軍がついに魔法連盟本部を襲撃するらしい」


 ルイの言葉に、エマの心臓が大きく跳ねた。


「それって……」

「俺も行くことになる」


 ルイの声には迷いがなかった。


「……私も行く!」


 エマは即答した。ルイだけを危険な場所に行かせるわけにはいかない。それに、自分もまた、魔法連盟に対して言いたいことが山ほどあった。


「ありがとう」


 ルイは微笑んでそう答えた。


「だが、すぐには行かない。反乱軍はこれまでごく一部の魔法連盟支部を襲撃したらしいが、これから各地域で一斉に支部へ攻め込むらしい」

「各地域で……すごい勢力だね」

「ああ。今の魔法連盟はそれだけ人々から反感を買っているというわけだ」


 ルイの言葉には、どこか冷静な分析が混じっていた。


 魔法連盟は表向きは秩序を守る組織だったが、実際には権力を振りかざし、多くの魔法使いたちを抑圧してきた。そのひずみが、ついに爆発しようとしているのだ。


「魔法連盟の各支部を一斉に攻めれば、少しすれば本部の警備が手薄になる。リーナたちはそこを狙っている。俺たちが動くのもその時だ」

「また魔法連盟のガーディアンズと戦うことになるんだね」

「そうだな。手薄になるからこそ、少数精鋭部隊が本部に残るだろう」


 ガーディアンズ――魔法連盟の精鋭部隊。彼らはただの兵士ではなく、選ばれし強者たちだった。並の魔法使いでは歯が立たない。


「……」

「不安か?」


 ルイが静かに問いかける。エマは少しだけ迷ったが、正直に答えることにした。


「……少しね」


 すると、ルイは穏やかな表情で言った。


「大丈夫だ。反乱軍も人殺しがしたいわけじゃない。俺の役目はあくまで魔法連盟の拘束だ。それに、エマは無理に戦わなくて良い」


 その言葉に、エマの胸の奥が温かくなる。ルイはいつもそうだ。戦いに身を投じながらも、エマのことを第一に考えてくれる。


「……わかった」

「出発まで、しばらくの間ここに泊めてもらおう」

「うん、そうだね」


 エマはゆっくりと深呼吸した。戦いが迫っている。魔法連盟本部を襲撃する――それはつまり、今後の魔法界の在り方を変える戦いになるということだ。


 これが、新たな時代の始まりなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ