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154. 命の恩人

 フィオナの寝室には、沈黙が流れていた。


 レオノーラは、眠る妹の手をそっと握りしめたまま、まだ信じられないようにその顔をじっと見つめていた。


 女戦士たちも、未だに警戒の色を解かぬまま、ルイを取り囲んでいる。


 しかし、その沈黙を破ったのは、ひとりの女戦士だった。


「フィオナ様を治したことには感謝する! しかし――」


 女戦士は杖を構えながら、鋭い声を上げた。


「ここは男子禁制の国、デア・ラキーナだ! たとえ命の恩人であろうと、男がこの地に留まることは許されない! すぐにここを――」

「待ちなさい!」


 レオノーラの鋭い声が、女戦士の言葉を遮った。


 その声音には、いつもの冷徹さとは違う、強い感情が込められていた。


 女戦士は一瞬驚き、思わず口をつぐむ。


 レオノーラはゆっくりと立ち上がり、ルイの方を振り向いた。


「……ルナ、いや、ルイと言ったな?」


 ルイは何も言わず、静かに彼女を見つめる。


「お前には、感謝してもしきれない」


 レオノーラの言葉に、女戦士たちはざわめいた。


 女王がここまで他者に感謝の意を示すのは異例だった。


「今日は王宮に泊まっていくとよい」


 その言葉が放たれた瞬間、女戦士たちの間に緊張が走る。


「しかし――!」


 先ほどの女戦士が反発しようとしたが、レオノーラはそれを静かに首を振って制した。


「フィオナの命の恩人だ」


 短く、しかし強い言葉だった。


 女戦士たちは驚きつつも、それ以上何も言えなくなった。


 ルイはしばらくレオノーラを見つめた後、わずかに口元を緩める。


「……世話になる」


 それだけを言うと、レオノーラは頷き、女戦士のひとりに命じた。


「ルイとエマを、王宮の客室へ案内しろ」

「……かしこまりました」


 女戦士は戸惑いながらも、王の命には逆らえないと理解し、静かに従った。


 こうして、ルイとエマはデア・ラキーナの王宮に泊まることとなった。

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