144. 魔法界へ
しばらくして、ついに魔法界へ戻り、次の目的地である島国デア・ラキーナを目指す日がやってきた。
キャンベル夫妻のサマーハウスの地下には、非常時に魔法界へ移動するためのフェリスパウダーと専用の暖炉が備えられていた。
この魔法道具のおかげで、デア・ラキーナまでは比較的早く到着できる予定だ。ルイはすでに女の姿であるルナに変身している。
エマもまた、五歳児の姿から本来の十四歳になる姿へと戻っていた。
「エマはそんなに大きかったのか。でも、その姿で闇の魔法使いに誘拐されたんだろう? 本当に大丈夫なのか?」
ニヴェラが心配そうにエマに尋ねた。
「ルナと私が一緒に旅していることは、もう闇の魔法使いにバレてるからね。わざわざ子どもの姿でいる必要はないよ」
エマはそう答えながら、肩に乗ったクロを軽く撫でた。
「まあ、それもそうだな」とニヴェラは納得するように頷く。
「まあ、闇の魔法使いたちと遭遇して古代魔法具を奪い取る必要もあるしな。危険だが仕方ない」とルナが静かに付け加えた。
「うん、そうだね」とエマは小さく頷いた。
「それにしても……ルイからもらった子ども用の服、気に入ってたんだけどな……」
エマが少し名残惜しそうにつぶやくと、ルナは呆れたように肩をすくめた。
「強力な防御魔法が施された服だ。サイズを無理に変えようとすれば、ケガするぞ。諦めろ」
「うん……仕方ないよね」
エマは少しだけ悲しそうにうなだれた。
「それで、どこまでワープするの?」
エマがルナに尋ねる。
「まずは空中都市エテルまでだ。そこからほうきで飛べば、デア・ラキーナまではすぐだろう」
「空中都市エテルって、魔法連盟本部がある場所だよね……?」
「ああ、そうだ。慎重にいこう」
ルナが低い声で返すと、エマは緊張した様子で小さく頷いた。
「よし、行くぞ」
ルナの指示に従い、ルナ、エマ、ニヴェラ、そしてクロは暖炉の中に立った。キャンベル婦人に礼を言い、ルナがフェリスパウダーをひと掴みすくい取る。
「頭を少し下げろ」
その一言の後、フェリスパウダーが宙へと舞う。粒子が輝きを放ちながら渦を描き、四人を優しく包み込む。瞬く間に視界が虹色に染まり、世界が変わり始めていった。