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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
142/207

142. ロリコン

 数日後、エマとニヴェラは湖のほとりで、穏やかな時間を過ごしていた。マックスとクロも楽しそうに追いかけっこをしている。


「平和だな」


 ニヴェラが湖面を眺めながらつぶやいた。


「幸せだね」


 エマは微笑みながら答えた。


「……エマは、このままここに残ったほうがいいんじゃないのか?」

「ううん。最後までルイと一緒に旅をするって決めたから」

「そうか。でも、こんな危険な旅にお前が必要な理由が、私にはまだよく分からん」

「足手まといにはならないように頑張るよ」


 エマは少し俯きながら答えた。その様子を見たニヴェラは、静かに頭を振った。


「心配するな。私もお前を守る」

「大丈夫だよ。でも……ありがとう、ニヴェラ」


 エマが感謝の気持ちを込めて笑顔を向けると、ニヴェラも照れくさそうに笑みを浮かべた。


 その時、サマーハウスのバルコニーからルイが顔を出し、大きな声で呼びかけた。


「エマ! ニヴェラ! ちょっと来てくれ!」


 二人が急いでバルコニーに向かうと、そこには「Happy Birthday」と書かれたケーキと、リボンで丁寧に包まれた小さな箱が置かれていた。


「え……? 誰かの誕生日?」


 エマがきょとんとした表情で尋ねると、ルイが微笑んで答えた。


「少し早いが、今のうちにエマの十四歳の誕生日を祝おうと思ってな」

「え、私!? わあ、本当に!? 嬉しい……!」


 エマの目が輝いた。その反応にルイは満足そうに頷いたが、横にいたニヴェラが眉をひそめた。


「十四? 本当に? お前が?」

「あ、そっか……私、今年で十四歳なんだよね……」

「身長、低すぎないか?」

「色々あってね!」


 エマが言い返すと、ニヴェラは小さく「ふーん」と呟いて、半信半疑のままだった。


 その後、三人はケーキを囲みながら楽しい時間を過ごした。食事が一段落つくと、ルイがそっと差し出した小包を開けるよう促した。


 エマが丁寧にリボンを解いて箱を開けると、中には薄いブレスレットが入っていた。繊細な細工が施された銀色のバンドに、青い宝石がはめ込まれている。


「これ、私に?」

「ああ。装着者を一度だけ致命的な攻撃から守る結界を張る魔法具だ。緊急時に役立つはずだ」

「えっ、こんなすごいもの……ありがとう、ルイ! 大事にするね!」


 エマはブレスレットを両手で大切そうに握りしめた。


 しばらくして、ルイとエマはリビングのソファで並んで寛いでいた。暖炉の火が静かに揺らめき、穏やかな空気が流れている。


「エマ」

「なあに?」


 エマが柔らかな笑顔で応えると、ルイは一瞬ためらったような表情を浮かべ、少し真剣な口調で話し始めた。


「今まで本当にありがとう。そして、これからもよろしくな」

「……急にどうしたの?」


 エマが不思議そうに首をかしげる。ルイはふっと笑うと、エマの額にそっとキスをした。


 その瞬間、エマは夢魔法での出来事を思い出し、顔が一気に赤く染まった。胸が高鳴るのを抑えられず、目を逸らす。


 しかし、そんな微妙な空気を壊すように、ニヴェラがリビングに入ってきた。


「ルイ……」


 ニヴェラはルイの行動を目撃したのか、眉をひそめながら呟いた。


「お前、もしかして……ロリコンなのか?」

「違う!」


 ルイはすぐさま否定するが、その必死な様子にエマは思わず吹き出してしまった。


「ぷっ……ふふっ……!」

「笑うなよ、エマ!」


 ルイが赤くなって抗議するも、エマは笑いを止められない。


「いくら顔が良いからって、犯罪だぞ」

「だから違う!」


 ニヴェラは呆れたように肩をすくめながらも、口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。


 やがて三人の間に、穏やかな時間が流れた。暖炉の柔らかな光が、まるでそのひとときを祝福するように静かに揺らめいている。

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