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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
137/207

137. 邪悪な魔力

「静かすぎて、逆に怖いね……」


 森の中を歩きながら、エマは小さく呟いた。木々のざわめきも鳥のさえずりもない不気味な静寂が、肌にじわじわと冷たさを染み込ませる。


「エルドラの迷宮森は、森を静めてしまえば危険は少ない」


 ルイが淡々と答える。彼の穏やかな声だけが、妙に響いていた。


 エマはふと立ち止まり、ルイを見上げて尋ねた。


「ねえ、どうして私に頼んだの?」

「何がだ?」

「森を静めることくらい、ルイにも簡単にできるでしょ?」


 ルイは少しだけ微笑みを浮かべ、わずかに肩をすくめた。


「俺にとって、この森を破壊するのは簡単だ。でも、生きた森を静めるには、エマのほうが適していると思っただけだ」


 その言葉に、エマは少し驚きつつも、唇の端を緩めた。


「……そっか」


 ルイが見せるさりげない信頼に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


 やがて三人は森の中心部にたどり着いた。そこには苔むした古い台座がぽつんと置かれている。だが、その上には何もなかった。


「やはり誰かに先を越されていたか」


 ニヴェラが苦々しい表情で呟く。


「そんな……ここまで来たのに……」


 エマは肩を落とし、台座を見つめた。


 「どうするんだ?」とニヴェラがルイに尋ねる。


 ルイは台座にそっと右手を置き、目を閉じた。そして、何かを探るように呟く。


「ここにあったのは間違いない。微かに残る魔力の痕跡が……」


 しかし、その言葉が終わる前に、突如空中に影が現れた。三人が振り返ると、筋肉質で長髪を束ねた男が宙に浮かんでいる。その全身からは、禍々しい魔力が放たれていた。


 「誰……?」とエマが小声で漏らす。


 男は邪悪な笑みを浮かべ、三人を見下ろした。


「エルドラの迷宮森であの強力な夢魔法を破り、ここまで来るとはな」


 ルイは瞬時に杖を構え、冷静な声で言い放つ。


「お前、ノスヴァルドの手下だな」


 その言葉に、男は感心したように目を細めた。


「へえ、よくわかるね。どうして?」

「以前、お前と同じ独特な魔力をまとった奴に出会ったからだ」

「ハッハッハ! すごい、いいねえ。気に入ったよ」


 男は声高に笑いながらも、次の瞬間には真剣な表情に変わった。その目は鋭く、明らかな敵意が宿っている。


「俺はな、魔法界の支配なんか興味ない。ただ……強い奴と戦いたいだけなんだよ!」


 その瞬間、男の体から邪悪な魔力が渦巻くように噴き出した。背後には巨大な鉄塊が出現し、その先端は鋭く光る刃のようだ。


「行くぞ……!」


 男がそう呟いた次の瞬間、鉄塊が三人めがけて一気に飛んできた。凄まじい音と共に、空気が切り裂かれる。


 「エマ、下がれ!」ルイが叫びながら、巨大な盾を展開する。


 一方、ニヴェラは素早く変身を解き放ち、その鋭い爪で迎え撃とうとする。エマは震える手で杖を握りしめながら、目の前の異様な状況に必死で向き合おうとしていた――。

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