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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
135/207

135. 別れ

「ルイ、どうしたの!?」


 暗闇の中、エマは息を飲みながら問いかけた。


「どうしたって……何がだ?」


 ルイの声は穏やかだが、どこか異様な空気が漂う。


「何って……いまの……」

「恋人にキスするのがそんなに変か?」

「恋人!?」


 エマの心臓が大きく跳ね上がる。背中に冷たい汗が流れるのを感じた。


「エマ、今日は本当に様子がおかしいぞ? 何かあったのか?」


 ルイは不思議そうにエマを見つめる。


「わ、わたし……ただ疲れてるのかも……ごめん……」


 言葉が震えるのを隠せないまま、エマは視線をそらす。


「そうか。じゃあ、もう寝よう」


 ルイはそう言い、エマの肩を優しく抱き寄せた。


「うん……」


 エマは体を固くしながら目を閉じたが、頭の中で警鐘が鳴り響き続けていた。


 翌朝、エマが目を覚ますと、隣にはまだ眠っているルイの姿があった。


「うーん……」


 エマはぼんやりと考え込むが、すぐに隣のルイがゆっくりと目を開けた。


「おはよう」


 ルイは柔らかく微笑む。


 「おはよう」とエマも微笑み返す。


「昨日の続きでもするか?」


 その言葉に、エマの心臓が一気に高鳴り、頬が熱くなる。


「ま、また今度ね……」

「まだ疲れてるのか?」

「ううん、寝たら元気になったよ」

「なら――」


 ルイは言葉を区切りながら、そっとエマに顔を近づけてきた。そして、ためらうことなく唇を重ねる。


 エマは驚きで目を見開く。


「嫌なのか?」


 ルイが優しく囁くように尋ねる。


「嫌じゃないけど……」


 そう言った瞬間、再びルイが微笑み、ゆっくりと彼女の方へ近づく――


 その時、空気を切り裂くような声が響いた。


「起きろ! エマ!」


 どこか遠くから、自分の耳をつんざくような叫び声――ルイの声だ。


「え……?」


 エマは凍りつく。目の前のルイは穏やかな微笑みを浮かべ、何事もないかのように彼女を見つめている。


「どうした?」


 その問いかけに答えることができないまま、エマは顔を曇らせる。


「今……誰かが……」


 しかし、その言葉を飲み込む間もなく、もう一度叫び声が響き渡った。


「夢だ! 起きろ!」


 世界が揺れ、エマは息を詰めた。


「戻らなきゃ……!」


 その呟きとともに、彼女の姿が幼いローブ姿に変わる。


「どこにだ?」


 目の前のルイが、切なげに彼女を見つめる。


「ルイ、ごめん。そして、ありがとう」


 エマは微笑みながら、心の奥で別れを告げる。


「リーベル・エグゾーディウム!」


 呪文とともに、幻想が砕け散った――。

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