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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
134/207

134. 違和感

 エルドラの迷宮森に足を踏み入れた三人は、古代魔法具の眠る中心部を目指して進んでいた。


 冷えた空気が肌を刺し、木々のざわめきが耳を満たす。足元の土はふわりと柔らかく、奇妙に生きているような感触だ。


 ルイは険しい表情を崩さない。


 「ルイ、大丈夫?」とエマが尋ねた。


「ああ……ただ、テンペスト・ソルヴィールの時と同じだ。ここに緑の古代魔法具があるとは限らない」

「え、それって……」

「レクス・ソルヴィールが反応していない。つまり、この場所にはない可能性が高い」


 「誰かが先に持ち去ったかもな」とニヴェラが口の端を歪めてつぶやいた。


「とにかく中心部まで行って確かめる。それまでは結論を急ぐな」


 ルイの言葉に全員が頷き、足を速めて進んでいく。


 霧が濃くなる。葉のざわめきがまるで声のように耳元で囁く――


 そして――


 エマは、突然、自分がロンドンの実家にいることに気づいた。

柔らかなソファに沈み込み、心地よい暖炉の温もりが頬を撫でる。


「……あれ? いま……あれ?」


 記憶が曖昧で、まるで夢の続きを見ているような違和感。


「エマ、そろそろ出かけるぞ」


 振り返ると、黒のタートルネックを着たルイが立っていた。彼の表情は柔らかく、どこか親しげだ。


「出かけるって……どこに?」

「どこって、映画を観て、夜はレストランでディナーだろ? 約束してたじゃないか」


 その言葉に、エマはますます混乱した。


「そ、そうだっけ……?」

「早くしないと間に合わないぞ」

「う、うん……」


 ルイと外へ出ると、彼はエマの手を取り、指を絡めて手のひらを合わせてきた。


「えっ……?」


 驚くエマに、ルイが首をかしげる。


「どうした?」

「いや、なんだか……普段と違う気がして……」

「いつも通りだろ? エマこそ、今日は少し様子が変だぞ?」

「そうかな……?」


 違和感を抱えたまま映画館に到着すると、ルイとエマはポップコーンとジュースを買い、シアターに向かった。


 指定された席に到着すると、それはカップル用のソファ席だった。


 「ここ?」とエマは戸惑う。

 「当たり前だろ?」とルイは微笑みながらエマの頭を撫でる。


(……なんだろう、この感じ。いつもと違う……?)


 映画が始まり、シアターが暗くなると、ルイは自然な仕草でエマの腰に腕を回した。


「え……」


エマは驚きつつも、抗うことなく映画に集中しようとした。


 上映後、二人はテムズ川沿いのビルにあるレストランへ向かった。窓際の席からは、ロンドンの夜景が美しく広がっている。


「こんな素敵な場所、どうやって予約したの?」

「たまにはいいだろう?」

「そうだね!」


 ルイとエマは景色を楽しみながら、豪華なディナーを味わった。


 食事を終え、自宅に戻ったエマは、両親の姿がないことに気づいた。


「お父さんとお母さん、どうしたんだろう?」

「旅行中だろう? 来週末まで帰らないって言ってたじゃないか」

「そっか……そうだったね」


 エマは少し引っかかるものを感じながらも、シャワーを浴びに浴室へ向かった。


 シャワーを浴びながら、エマは考え込む。


(……何かが違う……何か忘れてる……)


 浴室を出たエマは、自室のベッドでぼんやりと横になる。そこにルイが入ってきた。


「ルイ、どうしたの?」

「どうしたのって……いつも一緒に寝てるだろ?」

「あ……そっか。どうぞ」


 エマが横にずれると、ルイが隣に腰を下ろし、穏やかな声で言った。


「今日も楽しい一日だったな」

「うん……そうだね」


 エマが微笑むと、暗闇の中でルイが優しく彼女の頭を撫でる。そして――


 突然、唇が触れた。


(――えっ!?)


 エマは驚きで体を固くしたが、声を出すことができなかった。胸の奥に広がる違和感と、この状況の奇妙さが、彼女の思考を埋め尽くしていく。

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