133. エルドラの迷宮森
イゼルナからワープした後、少し歩くと、広大な湖が視界いっぱいに広がっていた。
澄んだ水面が鏡のように空を映し出し、冷たい風がさざ波を揺らす。
「このまま真っすぐだ」とルイが言い、ためらいもなく湖の水面を歩き始めた。
ニヴェラは軽々と宙を浮き、ルイの背後に続く。
エマは巨大化したクロの背中に乗り込み、クロもふわりと浮かびながら、同じように進んでいく。
「ねえ、ルイ……」
「どうした?」
「リュミナールで買ったアクア・ステップストーン、使ってる?」
「そんなもの要らない。水面くらい歩けるさ」
「……」
エマはため息をつき、(何のために買ったんだろう)と心の中でぼやいた。
静かな湖面を進み続けるうち、ルイが足を止めた。
「ここか」と、ニヴェラが小さくつぶやく。
エマが目をこらすと、周囲にはただ湖が広がっているだけで、他には何も見当たらない。
「ここって……どこ?」とエマは問いかけた。
「ついてこい」とルイが短く言うと、そのまま前方へ進み、突然その姿がかき消えた。
「え!? いなくなった!」
驚きながらも、エマもルイが消えた場所へ恐る恐る進んでいく。次の瞬間、景色が歪み、湖の中へ吸い込まれるような感覚に包まれた。
気づけば、彼女の足元は湿った草で、背の高い木々が視界を覆っている。
「あれ……? ここ、森?」
「エルドラの迷宮森だ。湖の中に隠されている」とルイが説明する。
その声に振り向くと、彼がすぐ隣に立っていた。
「すごい……本当に着いたんだね」
「そうだ。だが、ここからが本番だ。中心部へ進まなければならない」
ルイは深く森の奥を見つめながら続けた。
「この森は生きている。気を抜けば迷わされる。絶対にはぐれるな」
木々の間を吹き抜ける風が、まるで彼らの行動を見張っているかのようにざわめいた。