129. 豪華客船
水上都市リュミナールを出発する日、ルディアンに見送られながら、エマ、ルイ、そしてニヴェラは船に乗り込んだ。
「大きい船だね!」
エマは初めての豪華客船に目を輝かせて言った。
「ルディアンが手配してくれたんだ」と、ルイは遠くにいるルディアンに手を振りながら答えた。
「レストランに魚料理あるかな……」とニヴェラは、少し期待を込めてつぶやいた。
「心配いらない。インフィナイトの箱で長期間冷蔵保存できるようにしておいた。リュミナールの魚もたくさん購入してある」
「ほんとか!?」
ニヴェラは珍しく満面の笑みを浮かべて答えた。
(出会ったときはあんなに怖かったのに……)と、少しずつ打ち解けてきたニヴェラの姿を見て、エマは思わず微笑んだ。
船に乗り込んだ後、エマたちは船内の部屋へと向かった。
部屋に入ると、広々としたリビング、ダイニング、キッチンがあり、両サイドには寝室とバスルームが完備されていた。
入って左手の寝室とバスルームをニヴェラが、右手の寝室とバスルームをルイとエマが使うことになった。
「俺は少し調べたいことがあるから、インフィナイトの箱に籠もる。船内を散策するなら、エマと一緒に行動してくれ」とルイがニヴェラに言った。
「私にガキの子守をしろって?」とニヴェラは少し不満そうに言う。
「エマは、お前が思っているほど子供じゃない」とルイは答えた。
「まあいいだろう。行くぞ」
「あ、うん」
こうして、エマはニヴェラと一緒に船内を見て回ることになった。
「……手でも繋ぐか?」
「いや……大丈夫」
ニヴェラの気遣いに、エマは苦笑いしながら答えた。
(そういえば、ニヴェラにまだ私の本当の年齢を伝えてない……)
船内には、客室エリアを抜けると広々としたショップエリアやエンターテイメントエリア、レストランエリア、室内プールや温泉など、豪華な施設が揃っていた。
ニヴェラもエマも、「おお〜!」と目を輝かせながら周囲を見渡した。
エンターテイメントエリアでは、美女たちが可憐なドレスを着て、魔法の音楽を奏でている。
「あとでルイと一緒にレストランに行ってみよう!」とエマが提案した。
「そうだな!」とニヴェラも上機嫌で答えた。
エンターテイメントエリアを抜けようとした際、周囲から話し声が聞こえてきた。
「魔法連盟の支部がいくつか反乱軍によって壊滅されたらしいぞ」
「嘘でしょ?」
「本当さ。まだニュースにはなっていないが……戦争だな」
「やだ、怖い……」
(反乱軍……ついに動き出したんだ……)
エマは心の中で呟いた。
(本部を襲撃する時、ルイも呼ばれるのかな……)
その思いが、胸の中で重くのしかかった。