表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
128/207

128. 小さな苛立ち

「で、どうするんだ?」


 リュミナールの宿の部屋に戻ると、ニヴェラがすぐに問いかけた。


 ルイは窓の外に目をやり、しばしの沈黙の後、口を開いた。


「闇の魔法使いとは、いずれまた遭遇するだろう。その時に古代魔法具を奪い返す。それしかない」


 その声は静かだったが、確固たる意志がこもっていた。


 ニヴェラは腕を組み、しばらく考え込むように眉を寄せたが、エマが先に口を開いた。


「じゃあ、予定通り緑の古代魔法具を目指すってこと?」


 ルイは頷いた。


「そうだ。次の目的地はエルドラの迷宮森だ。まずは船で移動する。出航は来週だから、それまで体を休めておけ」

「エルドラか……さすがに距離があるな」


 ニヴェラが考え込みながら呟いた。


 それから出発までの間、ニヴェラはリュミナールの魚料理を心ゆくまで堪能していた。雲の上の国オルケードでは魚料理が限られているらしく、彼女の顔にはいつも幸せそうな笑みが浮かんでいた。


 一方、エマは一度闇の魔法使いに誘拐されたこともあり、常にルイと一緒に行動していた。彼女の視線の先には、インフィナイトの箱に魔法道具をしまい込むルイの姿があった。


 その箱は、もともとルイの持ち物だ。旅を始めてからは、二人で共有して使うようになっていた。


 箱の中には数え切れないほどの魔法道具が入っているが、旅先で見つけた珍しい品は、彼は必ず購入する癖がある。


 そしてこの街でも――。


「また買ったの?」


 エマが半ば呆れたように笑うと、ルイは小さな石を掲げて見せた。


「アクア・ステップストーンだ。これを使えば、水の上を歩けるようになる」


 「そんなものがあるの?」エマは目を輝かせた。


「リュミナールの特産品さ。何かの役に立つかもしれない。俺の道具は好きに使っていいからな」

「うん、いつもありがとう」


 ルイとエマが店の前で会話をしていると、ルイは街の女性に声をかけられた。


「あの……見ない顔ですが、この辺りの方ですか?」


 (またか……)とエマは心の中で呟いた。


 子供の姿でルイと共に行動するようになってから、ルイは道端でよく頬を赤くした女性に声をかけられるようになった。


(何回逆ナンされれば気が済むんだろう……)


 エマはルイを睨みつけた。ルイはいつものように、「旅人です。すみませんが先を急いでるんで」と言って、その場をすぐに去ろうとした。


「ルナの方がマシかもしれない……」


 エマが小声で呟くと、ルイは不思議そうに振り返り、「何か言ったか?」と尋ねた。


「なんでもない」


 エマは無愛想に答え、再び視線を外した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ