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エマと魔法使いのレオン 〜魔力を与えられた少女〜  作者: 希羽
第六章 エルドラの迷宮森
126/207

126. 炎と黒煙

 夜――。


 ルイとエマは同じ宿の一室で眠りについていた。隣の部屋には、頑なに「同じ部屋なんて絶対に嫌だ」と言い張ったニヴェラがいる。


 部屋の時計が深夜二時を指した頃、エマはふと目を覚ました。


 隣で寝ていたはずのルイの姿が、ない。


「ルイ……?」


 静かな室内を見渡したが、やはり彼はいない。


 そのとき、窓の外に目を向けたエマの視線が、遠くの夜空に煌々と立ち上る炎と黒煙を捉えた。


 ――西のリヴァース邸だ。


「嘘……!」


 エマは慌ててローブを羽織ると、外へと飛び出した。


 街の静寂を破り、全速力でリヴァース邸へ向かう。昼間、あの大きな橋を守っていた水の門番はいない。誰にも止められることなく、彼女は炎の中へと突き進んだ。


 だが、邸宅はすでに完全に炎に包まれていた。


 ――そして、その上空に浮かぶ二つの影。


 巨大な斧を肩に担いだ長髪の男と、冷たい眼差しの眼鏡をかけた短髪の男が、悠然と宙に漂っている。


 地上にはボロボロの姿で倒れるルディアン。そのすぐ前で杖を構え、彼を守るように立ちふさがるルイ。


「アクア・ソルヴィールさえ手に入れば、もう用はない」


 長髪の男が斧を振りかぶると、斬撃が何本もルイたちへと飛び込んだ。


 ――しかし、それらは瞬く間にルイの防御魔法でかき消された。


 だがその隙に、男たちの姿は夜の闇へと消えていた。


「ルイ!  ルディアンさん!」


 エマは二人のもとへ駆け寄る。


「大丈夫!?」

「エマ……! すまない、火を消してくれ。俺はルディアンを治療する」

「わかった!」


 ルイがルディアンに魔力を注ぎ込む間、エマは杖を掲げ、水の魔法で燃え盛る火を次々と消し去った。


 やがて炎が静まり、辺りには再び深夜の静寂が戻った。


「まさか、本当に闇の魔法使いに襲われるとは……」


 ルディアンは傷だらけの体を起こし、苦しげに息をつきながら呟く。


「しかも、アクア・ソルヴィールを……奪われてしまった」


 ルイは唇を噛み締め、悔しげに俯いた。


「俺が、もう少し早く気づいていれば……」

「いや、君のせいじゃない。ルイくん、責めることはないよ」


 ルディアンは痛みに耐えながらも、静かに首を振った。


 エマが微笑みかけ、優しい声で語りかける。


「ルディアンさんが無事でよかったです」


 ルイは険しい表情を崩さないまま、口を開く。


「さっきの奴ら……ノスヴァルドじゃなかった。だが、奴の手下で間違いない。一人はすでに闇の古代魔法具を持っていた」

「そんな……!」


 エマの表情に動揺が走る。


 ルイの瞳が暗い決意を宿し、夜の闇を見据える。


「これから先、より厳しい戦いが待っている」

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